東京大学とNPOカタリバが連携、中高生のための第三の居場所で新たな興味・関心を引き出す「まれびとプロジェクト」を開始

認定特定非営利活動法人カタリバ(本部:東京都杉並区、代表理事:今村久美、以下カタリバ)が運営する文京区青少年プラザb-lab(以下b-lab)は、2022年4月1日(金)より東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 山内祐平研究室と連携し中高生のための第三の居場所で新たな興味・関心を引き出す「まれびとプロジェクト」を開始することを発表した。

「まれびとプロジェクト」概要

背景

「やりたいことがわからない」「興味・関心を進路と結びつけられない」若者が増加傾向

2022年度から高等学校では「総合的な学習の時間」に変わり「総合的な探究の時間」が始まる。

高等学校学習指導要領では、今回の改定の基本的な考え方として次のように述べられている。

高等学校においては,名称を「総合的な探究の時間」に変更し,小・中学校における総合的な学習の時間の取組を基盤とした上で,各教科・科目等の特質に応じた「見方・考え方」を総合的・統合的に働かせることに加えて,自己の在り方生き方に照らし,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら「見方・考え方」を組み合わせて統合させ,働かせながら,自ら問いを見いだし探究する力を育成するようにした。

出典:高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 総合的な探究の時間編 P7

10代の若者がこれからの社会を生きていく上で、自ら問いを立て、自身の生き方に照らし合わせていく学びが強く求められるようになっている一方で、2021年に株式会社リクルートが実施した調査によると、高校生の進路選択上の不安について問う設問で、学力要因に次いで、「やりたいことがわからない(39%)」「自分に合っていることがわからない(35%)」と回答した人の割合が高いことが分かった。

またこの数値は2017年、2019年の同調査に比べて上昇している。

さらにベネッセ教育総合研究所が2016年に行った「大学生の学習・生活実態調査」では「受験する大学・学部を決める際に重視した点」への質問に対し「興味のある学問分野があること」が最も多い回答ではあるものの、その割合は年々低下し、8年前の同調査より10.3ポイント低い54.5%にとどまった。

進路を選択するにあたって、自身の興味・関心と関連付けることが減っている傾向にある。

来館者が15万人を超えた、中高生のための放課後の居場所(ユースセンター)

カタリバは、2015年4月から「いつでもなんでも挑戦できる中高生の秘密基地」をコンセプトに活動するユースセンター(※)「b-lab」を運営している(東京都文京区の教育委員会からの委託事業として運営)。

文化・スポーツ・学びに関する多様なイベントを通じて自分の可能性を発見する場として、専門的なスキルをもった地域の方によるレッスンやイベントを実施したり、自主企画型のマイプロジェクト(実践型探究学習)を取り入れたり、人と共同しながら自分のやりたいことにリーダーシップをもって取り組む力を育んできた。

2021年8月には来館延べ人数が15万人を超え、多くの中高生に、学校でも家でもない第三の居場所=サードプレイスと、たくさんの人との出会いや学びの機会を提供している。

※学校でも家でもない、中高生の居場所。放課後や休日などの時間に中高生が集い、ロールモデルとなる様々な人と出会い、いろいろなことにチャレンジしながら学ぶことができる場所。

中高生が新しい興味・関心と出会うためのプロジェクトをb-labと東京大学が立ち上げ

前述の活動を行ってきたb-labがこのたび、東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 山内祐平研究室と連携し、ユースセンターという場における中高生の興味を引き出すメカニズムを研究する「まれびとプロジェクト」を立ち上げる。

このプロジェクトでは、山内研究室の研究者が東京大学の若手研究者・大学院生と共に「まれびと(※)」としてb-labを訪問する。

「まれびと」とはもとは民俗学の用語で、異界から来訪し、人間界に刺激を与える存在のこと。

ここでは、「大学院生など大学で専門分野を学んでおり、b-labでプロジェクトを展開しながら、新たな世界を見せてくれる人」をまれびとと呼ぶ。

「まれびと」は自らの専門分野に基づいたプロジェクトや研究活動をb-lab内のスペースで遂行しつつ、その様子を開かれたものにすることで、中高生に専門的な活動を観察する機会や、共に作業してみる機会を提供する。

このようなユースセンターにおける「まれびと」との日常的な出会いを通して、中高生が興味・関心を発見したり、新たな好奇心と出会ったりするための場作りを追求していくという。

中高生が放課後に安心して集まれる「新しい居場所」を提供し、さまざまな方法で中高生の「やりたい」に伴走してきたb-labが東京大学と連携し、ユースセンターとしてのさらなる価値向上に取り組み、そこから見えてきた結果を発信することを通じて、ユースセンターについての知見を体系化し展開していくことを目指す。

期間

2022年4月1日(金)~2023年3月31日(金)

研究員

  • 研究責任者 山内祐平(東京大学大学院情報学環 教授)
  • 研究従事者 杉山昂平(東京大学大学院情報学環 特任研究員)

研究目的

  • b-labの日常空間のなかで中高生の興味を喚起し、新しいことをやってみたいと思えるような仕掛け方をデザインすること。
  • 興味を喚起する立場として専門分野を持った東京大学の若手研究者・大学院生に参画してもらうことで、大学で取り組まれている専門分野への興味を刺激すること

研究方法

  • 学習科学における興味論や学校外学習論の知見をもとにデザイン研究を行う。b-labスタッフの方々と協力しながら興味を喚起するための日常空間における「仕掛け方」を設計する。
  • デザインした仕掛けを実践に移し、参加した中高生に得られた体験を尋ねることで、興味が喚起できたか効果検証を行う。効果検証をもとにさらなるデザインの改善案をまとめる。

研究結果の公表方法

日本教育工学会をはじめとする学会での発表・学会誌への投稿を予定。

関係者コメント

山内祐平 | Yuhei Yamauchi 東京大学大学院 情報学環・教授

東京大学にとって近隣地域とのつながりを作ることは重要な課題です。

このたびカタリバ様にご協力いただき、文京区の施設であるb-labにおいて「まれびとプロジェクト」を進められることは私たち研究者にとっても大事な一歩だと考えています。

このプロジェクトが中長期的なパートナーシップに育っていくことを期待しています。

杉山昂平 | Kohei Sugiyama 東京大学大学院 情報学環・特任研究員

「興味」を研究テーマとする学習科学者として、今回カタリバ様と連携できることにとてもワクワクしています。

人が何かに興味を持つことの本質は、自分と世の中の接点を見つけることにあります。

「まれびとプロジェクト」を通して、b-labに集う中高生たちが専門分野に「出会い」「かじる」ことのできる場のデザインを実践的・実証的に形にできればと考えています。

学校外をフィールドにした興味研究は日本ではほとんど例がなく、学術的な価値創出にもつながるよう誠意取り組んで参ります。

米田瑠美 | Rumi Yoneda 青少年プラザ b-lab 館長

今年度、b-labは8年目に入りました。のべ来館者数も15万人に達し、数多くの卒業生たちが「“好き”に出会えたことがターニングポイント」と言葉にしてくれるなど、我々の「キッカケづくり」も実を結びつつあることを感じます。

この度、同じ文京区に位置する東京大学とのご縁に恵まれ、団体内のみならず国内でも例の無い、日常における中高生への興味喚起の在り方を共に探っていけることになりました。

b-labの価値を検証し、さらに高めていくことで、ユースセンターのさらなる可能性にチャレンジしていくことになると確信しております。