リクルート、DX推進を妨げる真の課題は何かを2つのケースから探る『コレカラ会議』9月10日に開催

株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村 吉弘、以下リクルート)は、『コレカラ会議』を2021年9月10日(金)に開催し、概要を発表した。

『コレカラ会議』は、リクルートの様々なサービス(就職、結婚、進学、住宅、自動車、旅行、飲食、美容、業務・経営支援など)を領域横断で俯瞰し、社会の変化をつかみ、問題提起や提言を通じてより良い未来へ貢献する目的で開催されている。

後日、詳細レポートも公表予定。

『コレカラ会議』概要

新型コロナウイルス感染症によって日常生活が一変してから、私たちはとても長い時間を過ごしている。

こんな時だからこそ、一人ひとりが未来に向けて前向きな一歩を踏み出せる日本でありたい。流れに身を任せて未来を待つのではなく、未来へ自ら動き出せる日本でありたい。

そのように考え、より良い未来へ貢献する目的で『コレカラ会議』を開催したという。

2009年度から11年間、年に一度開催していた『トレンド予測発表会』では、「変化の兆し」を紐解きながら「近い未来」を発信してきた。

しかし昨年、新型コロナウイルス感染症による非連続で変化の激しい日常に面したことから、「日本の未来を良い未来につなげる兆し」の発信である『コレカラ会議』へと進化。

リクルートは、就職、結婚、進学、住宅、自動車、旅行、飲食、美容、業務・経営支援など様々なサービスを展開している。その特徴を活かし、領域横断で俯瞰することから社会の変化をつかみ、問題提起や提言を行っていく。

日時

2021年9月10日(金) 11:30〜12:30

場所

オンライン開催

テーマ

DX推進の課題は、デジタル格差なのか?

9月1日にデジタル庁も発足し、国を挙げて待ったなしでDX推進がされる中、「デジタル格差」という言葉をよく耳にするようになった。

総務省はデジタル格差を、「インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差」と定義している。

この「デジタル格差」が埋まれば、日本のDX推進は加速するのだろうか?2つの実際のケーススタディより紐解いてみよう。

日本のDX推進の現状

新型コロナウイルス禍で日本のDX推進は加速したが、現状道半ば

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の2020年5月発表の調査(※「デジタル化の取り組みに関する調査」)では、「デジタル化の進展は既存ビジネスの優位性、永続性に影響を与えているか?」の質問に、2017年度〜2019年度の3カ年全てにおいて、9割以上の企業が「影響が出ている」「影響する可能性がある」と回答している。

さらに、電通デジタルの「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2020 年度)」では、新型コロナウイルス感染症によるDX推進に対する影響は「加速」すると50%の企業が回答している。

しかし、身近な例として飲食店のデジタルツールの導入状況(※リクルート「飲食店経営者のDXに対する興味・関心と導入状況の実態調査」)を見てみると、「キャッシュレス決裁」の導入は43.9%だが、例えば「予約管理ツール」は10.2%と、日本のDX推進は道半ばの現状が見てとれる。

2つのケース

CASE 1:児童の将来を考えてデジタル活用 見えた教育現場の課題

群馬県吉岡町立明治小学校 

吉岡町は、群馬県のほぼ中央に位置し、榛名山の南東山麓と利根川流域に展開した農村地帯。

文部科学省の「GIGAスクール構想」のもと、町主導で教育現場へのデジタルツール導入を促進。

明治小学校では、20代〜50代の教師が639人の児童に向けて、電子黒板やデジタル教科書、スタディサプリのドリル学習や動画講義などを活用した授業に対応してきた。

その過程で、改めて分かったことがあったという。

  • 指導歴の長い教師は、人が担う部分の指導力や、児童との関係性づくりの知見はある一方、デジタルツールを扱うことには不慣れな場合が多い。
  • 逆に、新任・若手の教師は、デジタルツールは使いこなせるものの、机間指導により児童の状態を把握するなど、本質的な指導は成長過程であることも多い。
  • さらに、デジタル活用によって、進化はもちろん、単純にデジタルツールを使いこなせるかどうか以外の課題も見えました。

進化した点は主に以下の3つ。

  • 動画で簡単に予習・復習できることで児童の自主性がアップしたこと。
  • 解いた問題の正誤がすぐに分かるため、児童の習熟度が速く可視化されるようになったこと。
  • 授業内で習熟度別のフォローが可能になり、つまずいている児童をより手厚くフォローできるようになったこと。

一方、課題も見えた。

分度器やコンパスなどの道具を使う単元では、手を動かす学びも大事であること。児童に声をかけ、励ますことでのやる気や安心感の醸成まではデジタルでは担えないこと。児童の表情の変化を読み取れないため、心配事に気付き、手を差しのべることはデジタルではできないことなど。

教師が向き合う「アナログ・リアルでやるべきこと」が明確になった。

株式会社リクルート ジョブズリサーチセンター センター長 宇佐川 邦子氏のコメント

明治小学校様は、デジタルツールを使えなかった人が、使えるようになればDXが進む、という安直な発想を払拭してくれました。効率よく勉強を教える意味で、デジタルは児童の自主性も高めて、とても効果があったのだと思います。

しかし、小学校教育は勉強を教えるだけではないわけです。児童の「やってみたい」「楽しい」を引き出すためには、教員の手が触れることでの「ぬくもり」や声かけによる「安心」が不可欠ということです。

デジタルはただの手段にすぎません。大事なのは、デジタルの得意分野とリアルの得意分野を意識して使い分け、どちらも伸ばしていくことだと思います。デジタル化の時代だからこそ、リアルの大切さが際立ちます。

CASE 2:新型コロナを契機に業界慣習を破る 「非対面接客」で捉える顧客ニーズの変化

野村不動産株式会社 

新築分譲マンション販売を手掛ける野村不動産。

高額商材、一生に一度の買い物でもあることから、対面での顧客対応が業界の常識だった。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、非対面での接客を強く望まれるように。顧客は効率的に物件情報を収集・比較するようになり、いかに非対面で物件の魅力を伝えられるかがポイントになった。

そこで取り組んだのは、モデルルーム来場前のデジタルを活用した情報提供。これは、新築マンション購入検討者・不動産会社双方が効率的なプロセスに進化することへと繋がったという。

起点となったのは、モデルルーム体験ムービーといった接客動画。

顧客はSNSの普及などにより動画による情報収集には慣れているであろうという営業担当の考えや、実際に顧客からも動画情報を求める声もあり、導入された。

不動産情報サイト『SUUMO』の2020年9月の調査でも、新築マンション購入検討者の87%が「動画があったほうがよい」と回答している。

導入時には「動画で本当に物件の魅力訴求は十分なのか?」という不安があったそう。

しかし、ブラッシュアップする中で顧客の慣習に合わせることを意識したと言う。例えば、動画を立地編、商品編に分けるなど、閲覧時間が長くならないよう気をつけたり、実際にモデルルームに来場したかのような臨場感を出せるような工夫を施した。

この接客動画が起点となった具体的な進化のポイントは主に3つ。

  • 非対面により営業担当者の業務効率化が進み、顧客の来場ストレスも軽減したこと。
  • 物件の提案内容が均質化されることにより、顧客は物件への期待感がアップし、購入決定までの期間が短期化したこと。
  • 動画が経験の浅い営業担当者の教材資料となり、接客レベルのボトムアップにつながったこと。

一方、営業担当者が注力すべきであるという課題も見えた。

購入資金や競合物件との比較など、顧客ごとのニーズに寄り添った提案をすること。購入決定に不可欠な、住むことを想定した現地での視察や体験への伴走をすること。「かゆいところに手が届く」「その視点には気付かなかった」など感動を創出すること。

これらは、デジタルではなく人がより注力すべきという課題が明確になった。

株式会社リクルート ジョブズリサーチセンター センター長 宇佐川 邦子氏のコメント

スマートフォンなどで気軽に動画撮影が可能になり、野村不動産様が向き合うお客様にとっても、動画で情報を提供・取得することが当たり前になりました。そこに気づいた野村不動産様は、業界慣習の壁を破って、お客様の期待に応えました。

お客様は、その場でぱっと知りたい情報と、営業担当者にじっくりと聞きたい情報が明確に違うはずです。そのため、接客動画による効率化は、人にしか担えない業務に営業担当者の時間と労力を割く労働環境の整備にもつながっているのでしょう。「優秀な営業パーソンの型化」を成し遂げたのも素晴らしいです。

多くの企業が課題とし、従来はロールプレイングやナレッジシェアで担保しようとしていました。これこそ、テクノロジーによる一挙両得と言えます。

 DX推進を妨げる真の課題

顧客や社会のニーズと現在の提供サービスの間にあるギャップを認識する

改めて、日本でDX推進が進まないのはなぜか。同社では、無意識の思い込みによる、顧客や社会のニーズと現在の提供サービスの間にあるギャップの存在に注目しているという。

ありがちなDX推進のイメージは、リアル/アナログな何かをデジタルに切り替えること、いわばデジタル化ではないか。ゆえに、「デジタル格差」が課題視されるのだと考えられる。

DX推進を妨げている問題は、デジタル活用で何を実現したいのかという目的が曖昧であることだとリクルートでは考えているという。

その目的を、顧客や社会のニーズに応えるということと置いてみると、多くの企業にとってDXを推進する動機になるのではないか。

テクノロジーの進化や働き方の変化などにより、顧客や社会のニーズは変わってきている。実は存在しているかもしれない、現在の提供サービスとそれらとのギャップを認識することが、DX推進の課題だと考えられる。

DXを推進するために

スマートフォン普及がDXではない 人が目的や動機を持つことから変革が始まる

D(デジタル)は、X(変革)のための手段にすぎない。変革は目的や動機を持った「人」にしかできない。

デジタル・トランスフォーメーション、つまりデジタルによる変革は、人の動機がなくては推進されないだろう。

実現したいことは何か? デジタルを活用すると実現に近づくのか? 顧客や社会のニーズに応えるためにデジタルを活用するという目線を皆で共有できれば、日本のDX推進は加速していくのではないか。


ABOUT US

埼玉県出身。2018年12月からほぼ毎日EdTech Mediaの記事を更新しています。 EdTech Mediaのほかに、教育業界専門の転職サイト「Education Career」を運営している株式会社ファンオブライフのマーケティング担当です。