株式会社公文教育研究会(代表取締役社長:池上秀徳〔いけがみひでのり〕、以下KUMON)を代表事業者とする事業体が、法務省が行う、少年院出院者への再犯・再非行の防止の実現を目指した学習支援事業に採択されたことを発表した。
この事業は、民間資金を活用した成果連動型民間委託契約方式を採用。
国の直轄事業である再犯防止分野において初めてSIB(Social Impact Bond)の手法を活用した新たな官民連携の仕組みを目指す先進的な取り組みである。
事業体は、KUMON、株式会社キズキ(代表取締役社長:安田祐輔)、一般社団法人もふもふネット(代表理事:藤岡淳子)により構成。
資金提供者である株式会社三井住友銀行、株式会社日本政策投資銀行、株式会社CAMPFIREによる、クラウドファンディングを含めた多彩な資金調達を受け、KUMONの学習コンテンツ、キズキの寄り添い型学習支援、もふもふネットの心理面や生活支援といった、各事業者の強みを活かした学習支援事業を推進していく。

団体名 | 主な役割 | ||
委託者 | 法務省 | 事業の委託者 | |
受託者 | 代表事業者 | 株式会社公文教育研究会
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事業の実施計画・遂行のとりまとめ。①資金調達、②学習支援環境整備(教材提供、学習支援事業者への研修およびOJT)、③学習支援計画の作成・面接、学習支援計画の見直し、④成果のとりまとめ、報告の主体者。 |
グループ事業者 | 株式会社キズキ | 学習支援を行う。①学習支援計画の作成・面接、②出院後の学習支援(公文式学習の指導・運営、個別の目標に応じた学習支援、学習支援計画の見直し)を担う。(東京拠点) | |
グループ事業者 | 一般社団法人もふもふネット | 学習支援と心理的なケアなど生活支援を行う。①学習支援計画の作成・面接、②出院後の学習支援(公文式学習の指導・運営、学習支援計画の見直し)、③生活支援を担う。(大阪拠点) | |
外部専門家 | 心理的なケアなど生活支援を行う。対象少年のアセスメント、処遇計画作成、個別面談等による本人の心情把握および問題行動の変化と生活改善のための働きかけ、必要に応じての保護者との連携や危機介入を行う。 | ||
資金提供者 | 株式会社三井住友銀行 | 変動金利型貸付にて資金提供 | |
株式会社日本政策投資銀行 | あおぞら銀行を信託受託者とした信託受益権投資型スキームにて資金提供 | ||
株式会社CAMPFIRE | 融資型クラウドファンディングにて資金提供(貸付) | ||
外部評価機関 | 特定非営利活動法人 ソーシャル・バリュー・ジャパン | 事業進捗について随時確認、SIBの観点からモニタリングを行う。
(代表理事:伊藤健…日本の社会的インパクト評価、ソーシャルインパクトボンド、社会的投資の普及促進に尽力。2015年に内閣府「共助社会づくり懇談会 社会的インパクト評価検討WG」委員会主査を務める) |
成果指標(プロセス指標・アウトカム指標)

SIB(Social Impact Bond)とは2010年にイギリスで開発された官民連携の社会的投資モデルで、社会課題を解決するサービスに、投資家が資金を提供してプログラムを実施し、削減された財政支出など、事業成果に応じて、自治体等が投資家へ成果報酬を支払う仕組み。
この事業ではプロセス指標とアウトカム指標の達成度合いに応じて、法務省から事業者に成果報酬が支払われる。
学習支援と生活支援を組み合わせたサポート体制

令和元年に保護観察が終了した少年院仮退院者の再処分率は、学生・生徒の者が11.8%に対し、無職の者は41.5%に上る(令和2年版犯罪白書)。
このことから、少年院出院後の学習支援は、再犯・再非行の防止に有用であると考えられているが、一貫性を持った継続的な学習支援の難しさがあった。
この事業では対象者が事業終了後にも継続的に自立して学習できるための基礎学力及び学習習慣をつけることを目指し、対象者の個別の目標達成に向けた寄り添い支援(個別の目標に応じた学習支援を含む)を含めた学習支援を行う。
また、学習を支える対象者の生活基盤を整えるために、専門家による本人・保護者支援等を含めた生活支援を組み合わせることで、より強力なサポート体制を組んでいく。
KUMONの学習コンテンツ、キズキの寄り添い型学習支援、もふもふネットの心理面や生活支援と、各事業者の強みを活かしたプログラムを提供する。
多彩な資金調達の仕組み
調達先 | 形態 | |
三井住友銀行 | 変動金利型貸付 | 成功報酬の水準に応じて、金利を変動させる仕組みを導入。 |
日本政策投資銀行 | 信託受益権投資スキーム | 法務省からの成果報酬債権を信託銀行に信託し、発生した信託受益権を投資家が購入する。成果報酬の水準に応じて、信託受益権の配当を受ける。 |
CAMPFIRE | 融資型クラウドファンディング | 主旨に賛同した一般の人々からクラウドファンディングを通して資金を調達し、貸付ける。 |
本事業は国が主体となる本格的なSIB事業において、多様なステークホルダーとリスクシェアを行う先例となるため、複数の調達形態を組み合わせた資金調達スキームを構築している。
事業概要詳細
今回採択された事業はSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)の手法を活用し、少年院に在院している少年のうち、学習意欲のある者について、少年院在院中に学習支援計画を策定し、その出院後に継続的な学習支援を実施し、対象者の再犯・再非行の防止を目指すもので、
- 国によるSIB事業のパイロット実施
- 学習支援を通じた新たな再犯・再非行防止対策の実施
という点において、新たな取り組みとなっている。
実施期間 | 契約締結日から令和6(2024)年3月31日まで |
対象者、人数 | 支援対象者は、少年院出院後、東京又は大阪に帰住する少年のうち、高卒認定試験の受験を予定している者や高等学校への復学を希望している者など
事業実施期間を通じて80名程度を想定 |
支援期間 | 出院前1~2ヵ月+出院後1年以内 |
業務内容 | 学習支援計画の策定、少年院出院後の支援(学習環境の整備、学習支援の実施、継続的な対象者の状況把握と学習支援計画の見直し)等 |
事業予算 | 最大支払額7,122万円 ※支払条件あり |
事業スケジュール
2021年8月~ | 学習拠点・環境整備、研修スタート。 |
2021年9月 | 出院前の対象者への面接・アセスメント、初回学習支援計画作成スタート |
2021年10月~ | 出院後の対象者学習支援スタート |
2024年3月 | 最終成果のとりまとめ、報告 |