株式会社ドコモgacco(東京都港区、代表取締役社長 佐々木基弘、以下ドコモgacco)は、立命館大学(京都府京都市、学長 仲谷善雄)及び AVR(エーブイアール) Japan(ジャパン)株式会社(東京都港区、代表取締役 立石雅之、以下AVR Japan)とともに、2021年3月28日(日)にVR(仮想現実)空間を使ったオンライン講義の実証実験を行ったことを発表した。
VR空間を使ったオンライン講義の実証実験概要

背景
働き方・生活スタイルが大きく変容した現在、「学び」も大きく変化している。
大学など教育機関の授業・公開講座は、オンライン化が進み、社会人の学び直しも盛んになっている。
MOOC※を提供するドコモgaccoの会員数はこの一年間で20万増となっている。
※MOOC : Massive Open Online Coursesの略称で大規模公開オンライン講座のこと
一方、リモートワークが普及するにつれて、上司と部下・部門間での不公平感などコミュニケーションの質が社会課題化しつつある。
このような社会環境を踏まえ今回、3者による産学連携で、近年、ゲーム業界のみならず、医療・不動産・観光など多方面での活用が進むVRを活用した教育プログラムを開発。
多様なバックグラウンドを持つ社会人を対象に実証実験を行い、その内容を発表した。
VR空間を活用した教育プログラム
今回、実施したトレーニングは、立命館大学湊研究室・桜井研究室が宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士訓練担当者の協力を得て開発した独自の教育プログラム(SFRMトレーニング※)をVR用にアレンジしたもの。
VR環境は、産業、教育、医療の分野でVRの開発を手掛けるAVR Japanが提供するVRサービス(AiMU(R))を活用。
ドコモgaccoの「gacco(R)(ガッコ)」の会員の中から、抽選で決定した10代~50代の受講者が体験した。
トレーニングは、VR空間に講師と受講者全員がアバターとして参加、4名1組のチームに分かれ、マップとサイコロを使ってゴールをめざすワークショップ。リモート下で、目的達成に必要なコミュニケーション・チームワークを身につけることを目的とした。
アバターによるトレーニングは年齢・性別・社会的立場がわからないため、自由で対等なコミュニケーションが生まれ、VR空間の特徴を十分に活かしたワークショップとなった。
今後、VR空間を活用した教育プログラムの開発が期待される。
※SFRM : スペースフライト・リソース・マネジメントの略。宇宙飛行士の訓練の一つで、宇宙空間における任務の遂行は、宇宙飛行士だけでなく、地球にいる支援者を含めたチーム全体で達成されることから、任務達成するためにどのようにチーム内で働きかけ、チームとしてどのように意思決定し、チーム全体を機能させていくかを学ぶトレーニング。立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科湊宣明研究室と政策科学部桜井良研究室によって、大学生や一般社会人向けのトレーニングとして応用研究が進められている。
講義内容
講義は下記の内容で実施された。
講義名
VR空間で開催!リモートワーク時代に求められるチームとしての遠隔行動トレーニング
実施日時
2021年3月28日(日) (1)10:00~12:20 (2)14:00~16:20 ※計2回開催
実施内容
米国航空宇宙局(NASA)で実際に宇宙飛行士の訓練に採用されているMoon-base Table-top Simulationを参考に、立命館大学湊研究室・桜井研究室が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士訓練担当者の協力を得て開発した「リモートワーク時代に求められるチームとしての遠隔行動能力を身につけるためのトレーニング(SFRMトレーニング)」をVR空間において実施。
受講者
各回20名、計40名(応募者の中から抽選で決定)
参加料
無料(実証実験として実施)
スケジュール
約140分間 VR操作練習:20分、SFRMトレーニング:約80分、総評:40分
SFRMトレーニング ブリーフィング:20分、リーダー決め:5分、(ラウンド:10分、デブリーフィング:15分)×2ラウンド
講義模様
AVR Japanが提供するVRサービス(AiMU(R))を活用してVR空間内に講義会場を構築し、受講者と講師は各自のPCからアバターとしてVR空間に入り、オンライン講義が行われた。
受講者は各自アバターを操作して各チームルームに移動し、自己紹介とリーダー決めの後、各自VR空間上で隔離された個人ルームに移動し、ラウンド1を実施。
ゲーム中は各自に配布されたマップ、を用いて、リーダーを中心に他のメンバーとともに音声のみのコミュニケーションで、ミッションクリアをめざした。
ラウンド1終了後、メインルームに集合し、各自の感想の共有と講師からのアドバイス、チームごとのラウンド1のデブリーフィング(振り返り)を行った。
デブリーフィングではVR空間に投影されたマップをメンバー同士で視覚的に確認しながら、得られた気づきと反省点について議論した。
その後のラウンド2では、ラウンド1でのデブリーフィングを活かすことで、情報共有と意思決定のスピードが上がり、多くのチームがミッションクリアすることができた。
最後に、メインルームに全員集合し、講師からの総評としてトレーニング全体の振り返りとチーム活動における重要なポイントを解説。
最後は拍手で講義を締めくくった。
湊 宣明教授(立命館大学大学院 テクノロジー・マネジメント研究科 教授)のコメント
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このトレーニングは通常受講者をそれぞれ独立した個室に配置し、トランシーバーを使って会話を行います。用意できる部屋や機器の数が物理的な制約となり、大規模な実施は困難でした。VR技術を活用することで場所と通信手段の制約が解消し、大規模なトレーニングを低コストで実施できるようになりました。
過去にはオンライン通話アプリを用いたこともありますが、アバターを介してチームメンバーの存在を認識できることで、遠隔にいながらチームとしての一体感を作り出すことに成功したと思います。また、受講者がVR空間を自らの意志で動き回り、新しい情報を入手することで、より能動的なトレーニングを実現できたと思います。
大学でもオンライン講義が一般化していますが、学生の講義に対する参加意識や同級生との仲間意識を醸成するために、このVR技術を活用した教育システムが有効ではないかと感じています。