金沢工業大学、文部科学省のデジタル活用教育高度化事業に採択

金沢工業大学の取り組みが、文部科学省が公募を行なっていたデジタル活用教育高度化事業「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」に採択されたことを発表した。

今回の取り組みにおいて、学内のデータの統合を進め、教員が効果的に学生の学びを支援できるためのデータを提供すると同時に、AI(人工知能)の技術による支援システムの構築も新たに行う。

また、「多地点等身大接続システム」や「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」を導入し、他大学との連携や、実験・実習科目などで活用し、学習効果の向上を図る。

金沢工業大学は2種類の事業に申請を行ない、両方が採択された。全体で252件の申請があり、私立大学で2種類の取り組みとも採択されたのは2大学のみだった。

金沢工業大学における教育Digital Transformation(DX)の推進について

金沢工業大学は、全学的にDXを推進することを方針としており、「学生一人ひとりの学びに応じた教育実践」「時間と場所の制約を超えた学びの創出」を実現していく。

今回の取り組みでは、まず各システムのデータを統合し、学生一人ひとりの入学から卒業までのデータを追跡。

続いて、卒業時の成績や就職先に基づきデータを整理して、「学生がどのように学びを深めたのか」また「学生がどのようにつまずいたのか」各々のプロセスを明確化し、これらのデータをAIの学習に用いて、人に加えてAIがアドバイスできるようなシステムの構築を新たに行なう。

また、「時間と場所の制約を超えた学びの創出」を実現するために、「多地点等身大接続システム」と「HMD」を導入し、対面と遠隔の教育を融合する環境を構築する。

これらの機器は、各接続拠点に参集した学習者が臨場感のあるリモート接続に参加し、大学間や企業との連携を遠隔で行うことを可能とし時間と場所の制約を超えた、多様な学びを実現し学びの質を高めるもの。

特にCADデータ等のVRコンテンツを共有する場合や、身体的な感覚が教育に必要な場合にはHMDを用いることで、感染のリスクを下げながら実空間で行われる教育に近い教育、さらに仮想でしか実現できない教育を実現する。

これまで金沢工業大学では、ポートフォリオを開発するなど、他に先駆けて種々のシステム運用と併せて、データを多量に蓄積している。

本計画では種々のシステムとデータを統合することで解析速度を上げ、AIによる学生支援を早い段階で実現する。

また、多地点等身大接続システムやHMDも既に運用の実績があり、これらを他大学へ普及させていくことが可能。

加えて、今回構築されるシステムやデータの解析結果や構築するAIを用いた支援システムと教育効果をホームページ、シンポジウム等を通じて広く公表していくという。

採択された取り組み

AIの技術や多地点等身大接続システム(写真)などを導入し、新しい学びを推進

「DXによる学生一人ひとりの学びに応じた教育実践」

金沢工業大学はこれまで、学生の学びの質向上と教学に関わる業務の効率化を実現するために、学内の様々な情報をデジタル化し、それらを運用するために、「KITナビ」「eシラバス」「自己成長シート」などのLearning Management System(LMS)を構築してきた。

今回の取り組みでは、運用されている学内のシステムのデータを統合し、シームレスなデータ解析を行うことをめざす。

現在のLMSを「入学前教育」「リカレント教育」までデータをカバーするシステムへと拡張し、卒業時や退学時の学生の情報をキーとして学生がどのようなプロセスで学んだのかを可視化し「学びを深めたポイント」「つまずいたポイント」を明確にしてデータを整理する。

この解析を進めることで、教員が効果的に学生の学びを支援できるためのデータを提供すると同時に、整理したデータをAIの学習に用いることでAIによる支援システムの構築も行う。

これらの取り組みの結果として、Society5.0において活躍できる人材を育成していく。

「DXによる時間と場所の制約を超えた学びの場の創出」

1) 産学連携プラットフォームを活用したコラボレーション教育の高度化

本取り組みでは、遠隔コミュニケーションツールの利点を活かしながら、欠点を補うことができる新しいシステムを構築することで、多様な背景を持つ学生が、社会問題の解決に一緒に取り組める教育環境を構築する。

具体的には、金沢市近郊の12の大学等が連携する「産学連携プラットフォーム」に参画する大学群を、「多地点等身大接続システム」で接続する。

この接続システムは、大きな実空間を共有でき、感染対策を施しながら学生が個々の地点から授業に参加できることから、対面のメリットをも活かした教育を実現できる。

同時に、大学間をリモート接続することで「時間と場所の制約を超えた学びの場の創出」を実現する。

2) Project Based Learning(PBL)と実験・実習からなる社会実装型教育の高度化

本取り組みでは、PBL科目と実験・実習科目に、HMDやデジタルコンテンツを体系的に導入することで、遠隔授業における学生の達成度の低下の問題を解決する。

工学系の実験では、装置を学生が囲んで手順の説明を聞くことがある。この際、装置の取扱方法や実験の状況を近接カメラと360度カメラで撮影しデジタル化することで、学生は自宅等でいつでも、その様子を繰り返し確認できるようになる。

また、実験装置の操作にAR(拡張現実)型のHMDを活用する。

例えば、学生が制御プログラムをシミュレータ上で動作確認した後、実際の装置に実装して動作させる場面では、シミュレーションと実機の動作の差をHMDで確認できる。

このようにサイバー空間とフィジカル空間の違いについても理解を深めることができる。

加えて、安全教育・倫理教育の面にも展開。実空間では体験できない起こりうる危険や事故を仮想空間上で体験できるコンテンツを制作することで、学生は一層の安全意識を持ち、倫理的な思考を深めることが可能となる。

文部科学省のデジタル活用教育高度化事業「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」について

大学等においてデジタル技術を積極的に取り入れ、「学修者本位の教育の実現」、「学びの質の向上」に資するための取り組みにおける環境を整備し、ポストコロナ時代の高等教育における教育手法の具体化を図り、その成果の普及を図ることを目的としたもの。

公募には、「学修者本位の教育の実現」と「学びの質の向上」の2種類がある。