増進堂・受験研究社が協力会社と合同で長期休暇中の「タブレット持ち帰り学習」時の学習動向調査を実施

達成評定児童/未達成評定児童の区分、冬休み中/3学期実施の区分で、タブレット持ち帰り学習を実施。

宿題としてノルマにされていない家庭学習用オンライン教材への取り組みによって、マネジメント力の差が明らかとなった。

今後、学術的な場で詳細な報告をする予定である。

タブレット持ち帰り学習に関する実証実験の概要

教育出版社 株式会社増進堂・受験研究社(本社:大阪市西区、代表取締役:岡本明剛)は、株式会社LTE-X(本社:東京都中央区、代表取締役CEO:池田武弘)と株式会社FUTURE VALUES INTELLIGENCE(本社:東京都文京区、代表取締役:萩原静厳 以下、FVIと略記)と共同で以下の実証を行い結果を発表した。

長期休暇時に、小学生にオンライン学習教材が入ったタブレットを家庭へ持ち帰ってもらい、教員の管理下にない児童の家庭学習の取り組みについて、学習行動を分析。

今回の実証事業には、墨田区立第二寺島小学校(東京都墨田区、学校長:江口千穂)が協力した。

それぞれの担当は以下の通り。

  • 増進堂・受験研究社:教材デザイン・教材提供
  • LTE-X:セキュアな通信環境および簡便な端末管理/アクセス管理機能の提供
  • FVI:データ分析業務
  • 第二寺島小学校:持ち帰り学習に協力してくれる有志の募集やアンケート・事前事後テストの実施・教材デザイン、説明会の実施

※写真:対象者に向けてタブレット端末・アプリの操作方法を指導している増進堂・受験研究社とLTE-Xのスタッフ

実証事業内容および分析結果の詳細については、今後、学術学会もしくは教育実践研究・報告の場にて公表を行う予定。(現在、新型コロナウイルスの影響で予定していた学会が延期になった関係上、発表時期・場所については検討中。)

実施目的とその背景

昨今、「一人一台タブレット」を掲げた「GIGAスクール構想」など政府主導の教育ICT拡充を図る動きが活発になっている。

その背景には、日本の公教育でのICTのリテラシー育成・運用能力のみならず、現状のウェブメディアの情報活用も含めた読解力の育成が期待されている。

タブレット端末を児童に渡すだけで上記の目標が達成されるわけではない。

教員主導による授業内でのICTツール活用という場面だけではなく、家庭での自律的な活用こそが求められることになるはずだ。

このような自律的なICTツール活用(今回はタブレット端末)を促進するための環境設計がどうあるべきかを検討することが重要だという認識のもと、各社が提携しながら、本実証事業を進めることとなった。

実施状況

  • 対象者:第二寺島小学校在籍の小学校5年生の有志55名(一部、小学校6年生も参加)
  • 実施時期:第1期(冬休みを含む2週間)、第2期(始業式後の3学期の2週間)
  • 教科:英語、国語、算数 いずれも1・2学期の復習内容
  • アンケート調査:各期参加者ともに、事前・事後に同一項目にて学習姿勢・学習意識についてのアンケート調査実施
  • 事前・事後テスト:各期参加者ともに、持ち帰り用タブレットに用意した教科・単元に準拠した小テストを事前・事後に実施

通信及び通信システム

LTE-X社提供、通信を暗号化し、適切なフィルター機能を備えた通信プラットフォームおよび、アクセスログ管理や端末管理のできるタブレット端末を用意。

教材

上記教科の中から、第二寺島小学校の教員と復習テーマを選択し、教科書の基本レベルの問題を1日15分程度(三教科合計)で行える量を14日分相当用意。

ウェブアプリで提供。間違えた問題はストックされていき、さらに復習がアプリ上で行えるように設計。

指導

宿題として強制はせず、タブレット端末およびウェブアプリの使用法のみ指導。当初からの方針通り、第1期・第2期を通じて進捗管理や声かけは実施せず。

実施にあたっての注意点

事前の想定として、児童を「Aグループ」「Bグループ」に分けて学習行動を分析。※Aグループは「達成評定児童」、Bグループは「未達成評定児童」(学力調査結果での区分に準ずる)として区分。

Aグループ・Bグループは、人数配分としては第1期・第2期にうまく分配された。

教材はBグループに解けるようになって欲しい単元、レベルで構成した。教科書レベルの内容とした。

※便宜上、Aグループの第1期(冬休み実施)を「A1グループ」、第2期(3学期実施)を「A2グループ」と略称する。(Bグループについても同様)

分析結果(一部)と今後の検証課題

4-1. 各教科、各グループの正答率比較

→Aグループ/Bグループの区分はそのままタブレットにあるオンライン教材の正答率と相関があった。

4-2. 各教科、各グループ、各期の正答率比較

→Aグループは期によって正答率に有意な差は見られなかった。一方、Bグループは第1期に比して、第2期の正答率が大幅に下がった。

4-3. ログイン日数

→Aグループは第2期の方が上昇。しかしBグループは有意な差はない。

4-4. 各教科、各グループ、各期の学習量比較

→Aグループは全体的に第2期の方が回答数向上。しかし、Bグループは(ログインでは差がないものの)回答数が第2期で大幅に下がっている。

また、回答数が多い学習者ほど、事前テストから事後テストのスコアが上がることもわかった。

鍵となるのは、家庭学習での自己マネジメントであるという想定ができる。ここでの自己マネジメントというのは、

  • (甲)教材にログインするように自らを促す力
  • (乙)ログインした後に教材を丁寧に継続的に学習するように自らを促す

とする場合、(乙)に相当する力のことである。

今回、ログインをするという点で、A /Bのグループ、期ごとの差異はなく、有志ということもあってタブレット学習に向かう意識としての(甲)の差は見受けられなかった。

しかし、第2期での、学校で進行している新しい単元学習とタブレットによる復習とが同時並行で行われる状況にあっては、(乙)のようなマルチタスク遂行をする際のマネジメント力に差があると解釈できる。

実際に、タブレット教材のレベルは丁寧に取り組めばBグループでも解けるものである。能力的な問題ではなく、また心理的な問題というよりも、管理能力に関わる課題であると言える。

今後の課題としては、このマネジメント力ということを基軸に、マネジメント力がまだ伴わない学習者への支援をどのように行うか、どのような環境が必要かを明確にすることだ。

今回、時期を2つに分けたことで、純粋に復習に取り組めた第1期と、新しい勉強をしつつ復習するという第2期とでマネジメントの方向性が異なった。

第2期に対して、新しい単元の「定着」に関する出題をした場合にどのような結果になるのかも検証しなければならない。

また、教材レベルを選択できるようにするなど、学習者の到達度に合わせた学習によってマネジメントに際して変化があるかの検証も今後の課題である。

なお、運用に関しては各家庭でのトラブルシューティングなども含めて設計を行うことが必要である。

今回得られた知見を基に、今後の取組みに関しては実施団体へのノウハウ共有も含めてどの家庭でも安心安全な持ち帰り学習を行うべく三社のそれぞれの強みを活かして連携を強化して対応していく。

保護者の意見

  • 開始当初、コンテンツが開ないことがあったので学習が進まなかった。負担なくタブレット学習に取り組めるようになるとよい。
  • ノート、教科書を開くよりボタンを押せば始まるから取り組みやすい。
  • 空き時間に素早く準備ができて、片付けにも時間がかからないから取り組みやすい。
  • タブレットを見るために姿勢が悪くなってしまう。

児童たちの意見

  • 最初のパスワードの入力方法が難しかった。
  • 長期休業中に取り組めたことで、自分で電源をつけて自分で学習に取り組む習慣ができた。(今まではできなかった)
  • 学校がある間は習い事で忙しいので夕方~夜にタブレットPC学習に取り組むことが難しかった。

第二寺島小学校の教員たちの意見

  • タブレットPC学習への興味・関心が今後さらに拡がり、家庭でも予習・復習ができる環境が整うとよい。
  • 弱点(苦手な内容)が円グラフで明確になり、必要な学習内容が明確になるのがとてもよい。
  • 取り組む際の手軽さと、重量的な軽さが魅力のタブレットPC学習。学校の授業と合わせて、充実したコンテンツで今後も子どもたちの学習を支えたい。