ユニセフ、11カ国1万5,000人のデータを比較し子どものインターネット利用に関する報告書を発表

ユニセフ(国連児童基金)は、ベルリン(ドイツ)で29日まで開催中のインターネットガバナンスフォーラム(Internet Governance Forum:IGF)において報告書『つながる世界で成長する私たち』(原題:Growing up in a connected world)を発表。

この中で、子どものインターネット利用の行き過ぎた制限は、子どもたちが学習とスキルを身に着ける機会を奪うと述べた。

『つながる世界で成長する私たち(原題:Growing up in a connected world)』概要

ユニセフ・イノチェンティ研究所とLSE ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(ロンドン大学)が、Global Kids Onlineの調査に基づいてまとめたこの報告書は、ヨーロッパ、アフリカ、東南アジア、ラテンアメリカの11カ国における1万5,000人近くの子どものインターネット利用に関するデータを比較している。

子どもたちがインターネット上で行うことは、たとえ娯楽と見なされるものであっても、デジタルスキルの構築に非常に重要であることを指摘している。

ユニセフ・イノチェンティ研究所所長代行 プリシラ・イデレ(Priscilla Idele)氏コメント

私たちは、子どものインターネット利用のリスクについてはよく耳にしますが、インターネットが提供するレジリエンス(回復力)や、子どもたちのデジタルスキルの構築についてはあまり語りません。

道路の渡り方を教えるのと同じように、子どもたちにはインターネットの使い方を教えるべきです。リスクがあるからといって、子どもたちが道路を渡るのをやめさせることはできません。私たちの役割は、あらゆる状況で、安全で責任を持った道路の渡り方を子どもたちに教えることと、子どもたちを守るための安全策を講じることです。

この報告書では、より広範なインターネット上の活動に参加する子どもたちはインターネット利用に熟練している一方で、インターネットへのアクセスが制限されている子どもたちのデジタルスキルは弱い傾向があることを指摘している。

例えば、ゲームや動画などのネット上のエンターテインメントは、幼い子どもたちが教育的、情報的、社会的なネット上での経験に関心を抱く助けにもなる。

報告書は、娯楽だけに留まらずインターネット上での活動を広げていくことで、さまざまな技術や重要な能力も伸ばすことができると述べている。

ユニセフ・イノチェンティ研究所の子どもとデジタル技術の研究主任 ダニエル・カルデフェルト・ウィンター(Daniel Kardefelt-Winther)氏コメント

子どもたちは、ある程度のリスクがあることを前提に、デジタル環境を活用する方法を学ぶ必要があります。これは、オフラインの世界でどう歩んでいくかを学ぶのと同じです。

保護者が必要以上にインターネット利用を制限すると、子どもたちの将来のための準備が疎かになってしまうかもしれません。最も重要なことは、子どもたちがサポートを必要としている時に、おとなはそれに応える準備ができているということです。

インターネットの使用における子どもへのリスクとして、報告書は次のような事例を紹介している。

  • 南アフリカで調査対象となった子どもや若者の半数以上が、ネット上で性的コンテンツに晒されたと述べた。
  • イタリアとウルグアイでの調査対象者22%が、自傷行為の内容に晒されたと述べた。
  • イタリアとウルグアイで調査対象となった子どもの35%が、ヘイトスピーチに晒されたと述べた。
  • ブルガリアの10〜14歳のFacebookユーザーのうち、5人に2人がアカウントを公開している。
  • 調査対象となった11カ国で、30%から75%の子どもが、ネットで得られる情報の真偽を見分けられないと答えている。

子どもたちがデジタル世界のリスクに晒されているのを最小限に抑え、その利益を最大限に活かすには、問題のあるオンラインコンテンツやそれへのアクセスに対処することが重要。

ユニセフは、ハイテク企業に対して、幼い子どもにとって有害なコンテンツを積極的に監視および削除し、保護者や教育者が、子どもたちがインターネット上での機会を最大限に活用できるようサポートすることを求めている。

中でも、保護者は、子どもたちにインターネット上で何をするかについて話したり、一緒に活動したりするなど、重要な役割を果たすと報告書は指摘している。

保護者からのサポートがあって、子どもたちはインターネット上でより幅広い活動に参加し、スキルを伸ばし、リスクに晒されることも減らすことができる。

LSEの社会心理学教授 ソニア・リビングストン(Sonia Livingstone)氏コメント

Global Kids Onlineの調査では、子どもがインターネット上で過ごす時間を心配するよりも、親が子どものデジタル世界に積極的に関わり、遭遇する可能性のある特定のコンテンツと接触のリスクについて話し合うことで、子どもが自己回復力を得て、成長できると示唆しています。

また、学校では、どのようにインターネットを使って情報を得て、見つけた情報の真偽を見分けるかについて、教師から子どもたちに指導する機会を持たなければならない。

報告書では、授業の一環としてこのような内容が実施できるよう、教師への研修機会が必要だと強調している。

子どもたちは、自分の携帯電話などモバイル端末を用いたり、自宅でインターネットにアクセスする機会が増えている。

子どもの安全を守りながら利益を最大化するには、子どものインターネットとの付き合い方についてバランスの取れた取り組みが必要である。

※本報告書に提示されたデータは、ユニセフ・イノチェンティ研究所およびLSEが率いる研究ネットワークであるGlobal Kids Onlineによって、アルバニア、アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、チリ、ガーナ、イタリア、モンテネグロ、フィリピン、南アフリカ、ウルグアイで収集。このネットワークは、ネットを利用する子どもたちのデジタル空間での体験について比較可能なデータを収集することを目的とするもの。