東洋大学、主要60カ国を対象とした「グローバル・イノベーション・ランキング2019」を発表。1位はシンガポール、日本は32位

東洋大学(東京都文京区/学長 竹村 牧男)グローバル・イノベーション学研究センター(センター長 竹中 平蔵)は、各国のグローバリゼーションとイノベーションの進展度を総合的かつ客観的に評価する指標として「グローバル・イノベーション・インデックス」を独自に開発し、同指標を用いて主要60カ国を国別にランキング化した「グローバル・イノベーション・ランキング2019」を作成。

その研究成果として、全58項目からなる指標の詳細、60カ国のランキングおよびスコア、分析結果に基づく提言等を発表した。

目的

今日の世界の動向をみると、政治・経済の両面にわたり、グローバリゼーションが進展するとともに、サイバー技術を中心に技術体系が変革を遂げつつある。

こうした変革は、その進展度を動態的かつ統一的に捉える必要性を高めている。

2016年1月に開設した東洋大学グローバル・イノベーション学研究センター(センター長:竹中 平蔵)ではこうした要請に応えるため、今回グローバル・イノベーション・インデックス(GII、Global Innovation Index)を開発した。

また、このインデックスを用いて、世界60カ国をイノベーションの進展度でランキングする、グローバル・イノベーション・ランキング2019(GIR、Global Innovation Ranking)を作成した。

なお、このランキングは、今後毎年作成し、公表する。

GIIに基づくグローバル・イノベーション・ランキング2019

全体の概要

1位から8位まで、シンガポール、ルクセンブルク、スイス、ニュージーランド、アイスランドなど、小国が並んでいる。

これらの国のイノベーション力が高いことと、指標算出にあたり、相対値を用いた項目があることも影響している。

それに続いて、9位アメリカ、10位イギリス、15位中国と大国が顔を出した。

一方、日本の総合スコアは、60カ国中32位であった。

GDP世界3位の経済力からして、イノベーション力が大きく劣っているのは、5領域でみると、「人間力」、「国際調和」がとりわけ低いことによっている。一方、「技術革新」については比較的良好な数値を示している。

以下、代表的な指標を取り上げて、日本についての評価を示す。

人的関係資本

少子高齢化により、「人口の若さ」を示す、生産年齢人口に占める若年層の割合が60カ国中最も低く(60位)と他国を大きく下回っている。また、学生の起業意向もデータを取得できた43カ国中最下位(43位)である。

多様性

女性管理職割合に関しては、データを取得できた56カ国中53位であり、スコアも27.8と極めて低い数値にとどまっている。

また、LGBTへの寛容度は、アンケートを元にした数値であるものの、データを取得できた43カ国中42位と下位である。

知識基盤

際立って低い数値や項目は見られないものの、R&Dの技術者数では、中国や米国に見劣りする結果となっている。

アントレプレナーシップ

際立って低い数値や項目は見られないものの、ベンチャーキャピタル投資額がデータを取得できた34カ国中の22位にとどまっている。

主要5カ国比較分析

ランキングの分析にあたって、日本、アメリカ、中国、ドイツ、シンガポールの5カ国を注目国とした。

米中の大国に加え、欧州からドイツを、アジアからシンガポールを選ぶことで、イノベーション進展度の国際比較をより詳細に行うことにした。

この主要5カ国比較では、5つの大項目についてみると、全体順位1位のシンガポールは、各項目バランスの取れたスコアとなっている。

一方、中国、アメリカは技術革新において、際立ったスコアを示している。

これは、R&D技術者数や、研究開発投資額などの絶対値を用いた結果でもあるが、イノベーション力を大きく規定する技術面での優位性を示している。

以下、5つの大項目について、概要を示す。

国際調和

シンガポールが高く、日本が低い。

シンガポールのような小国がイノベーションに取り組むには、国際調和が必要であり、特に温室効果ガスの削減の1990年と比べた削減率の高さといった点が特筆される。

一方、日本のこのスコアが低いことが、日本のイノベーション力の発展を阻害している可能性が高い。

市場動向

シンガポールは労働生産性をはじめとする勤労環境に関する数値が高く、また、ベンチャーキャピタル投資額が飛び抜けて高い。

技術革新

中国は、R&D技術者数において突出しており、続いてアメリカは、特許出願数の数値が極めて高く、優位に立っている。

日本は特許出願数および知的財産権等使用料収入においてドイツを上回っている。

人間力

日本は、少子高齢化「人口の若さ」を示す、生産年齢人口に占める若年層の割合が低いこと、また、女性や移民といった多様性に関するスコアがいずれも極めて低い。

関連政策

シンガポールは、財政状況や税制の面で他国よりも高いスコアを示している。中国は、汚職への対処や政治の安定性に関するスコアが低い。

以下は、主要5カ国のスコアを、18の中項目について比較したものである。

ここからは、アメリカのアントレプレナーシップ、中国の知識基盤が突出して高く、日本の人的関係資本が低いことが見て取れる。

ランキングと経済成長

グローバル・イノベーション・ランキング2019と、一人あたりのGDP成長率の相関をとったところ、相関係数は、0.80 と高い相関が示された。

イノベーションの進展度と経済成長の間に、高い相関があることが明らかになった。

他のランキングとの比較

経済成長力やイノベーションに関する国別ランキングには、

  • IMD(国際経営開発研究所)の「世界競争力ランキング」(World Competitiveness Ranking)
  • WEF(世界経済フォーラム)の「グローバル競争力指数」(Global Competitiveness Index)
  • WIPO(世界知的所有権機関)・コーネル大学(Cornell University)・INSEADの「グローバル・イノベーション指数」(Global Innovation Index)

などがある。

IMD、WEFがビジネス・経済の効率性を重視するのに対して、東洋大学、およびCornell大学・INSEAD・WIPOは観察指標が社会的指標を含む広範なものとなっている。

以下に、4つのランキングの上位国、および本学が注目した主要5カ国の順位を示す。

出典

日本への提言

大項目での「人間力」が、60カ国中57位と極めて低い順位となっている。

その中で、外国人移民数や、留学生数の増大や、女性管理職割合の上昇による多様性の向上や、学生の起業意向や、技術系・工学系部門の世界大学ランキングの順位向上などが喫緊の政策課題と言える。

日本の順位が低く、比較的短期に政府の政策対応が可能と思われる、「サービス貿易の自由度、起業のしやすさ、対内直接投資(GDP比)、ベンチャーキャピタル投資(対GDP比)、学生の起業意向、大学進学率、25歳以上の高等教育参加率、TOEFL iBT 平均スコア、外国人移民数(対人口比)、留学生数(対学生比)、女性就業者比率、女性管理職割合(管理職数に対する)、国際会議開催件数(対GDP比)、 所得税累進課税最高税率、法人税率(5か年平均)、法人税率」の15指標について、シンガポールの数値を代入したところ、スコアは53.6となり、順位は15位に上昇することがあきらかになった。

グローバル・イノベーション・インデックス構成表

グローバル・イノベーション・ランキング2019

グローバル・イノベーション・ランキング【日本の各指標順位一覧】

グローバル・イノベーション・インデックスの構成およびランキングの算出方法

対象項目

世界各国のイノベーションの進展度を測るために、

  • 就業者一人当たりの生産性
  • 特許出願数
  • R&Dの技術者数 など

58の国際比較指標を選定し、それらを、「国際調和」、「市場動向」、「技術革新」、「人間力」、「関連政策」の5つの大項目、さらに18の中項目に分類した

対象国

216カ国・地域を対象として、本センターが設定した58指標のうち53指標以上のデータ収集ができた60カ国をランキングの対象とした。

対象年次

データの採集年度は、可能な限り直近(2018年)まで。

国やデータの性質によっては、それ以前のものを用いた。また、国際統計にない国のデータについて、主要国は本センターが独自に収集した。

スコアの計算方法

  1. 国の人口規模でイノベーションに与える影響が左右されないと思われる項目は、データ値を人口やG D Pで割るなどで相対化した。
  2. データ値の大小が、イノベーション力の大小と逆になる項目については、データ値を逆転させた。(国民負担比率など)
  3. その上で、58指標それぞれを偏差値化し、国ごとに集計しデータ数で割ることでスコアを出した。
  4. 集計に際しては、イノベーションに与える影響が大きいと思われる項目は、ウェイトを2倍にした。