この記事では、反転授業についての解説を行っています。反転授業とはそもそも何か?どういった背景で注目されるようになったのか。導入に際してのメリットやデメリットについてまとめています。
反転授業とは何か?

反転授業とは、従来の授業のやり方と役割を反転させた授業のことです。
従来は、授業で講義を受け、自宅や授業時間外で問題演習などの宿題を行う方法が主流でした。反転授業はこのやり方を逆にします。
講義を受ける(インプット)のは、宿題としてやっておき、授業時間ではその内容をもとに問題を解くことや議論、グループワークを行うことに使います。授業はリアルに生徒や先生が集まって出来ることに集中して、個人で出来ることは自宅でやるという考え方にもとづいています。
反転授業が注目されるようになった背景は?
インターネットの普及、オンライン上でビデオを見られる環境(ブロードバンド)が整ったことが大きなきっかけと言えるでしょう。
非常に有名なのは、無料の学習サイト「カーン・アカデミー」の創設者サルマン・カーン氏のTEDでのプレゼンテーションです。自身の知人の女の子に遠隔で勉強を教えていたことがきっかけで、それをビデオに撮影しYouTubeにアップすると、評判が広まりサービスが広がっていきました。
このプレゼンテーションの中で、サルマン・カーン氏は、
教室でのテクノロジー利用の話としては 直感に反するでしょうが、一律的な講義を教室からなくし生徒に家で自分のペースで講義を受けさせ、その後、教室で先生のいるところで宿題をさせて 先生や他の生徒と 交流できようにすることで、先生たちは教室をより人間的なものに変えたのです。
教室というのは これまで非人間的な場でした。30人の子どもたちは 口を閉じ、互いにおしゃべりすることができず 先生はいかに優れていようと十把一絡げの授業を30人の無表情で少し反抗的な生徒相手に進めることになります。
それが今や人間的な体験へと変わり互いにコミュニケートできるのです。
というように反転授業によって、より生徒とのコミュニケーションが充実すると述べています。
自分のペースでやらせると、これは何度も目にしている ことなのですが、最初のいくつかの課題を学ぶときに 時間のかかっていた子どもたちがそれを理解したあと、急に上昇を始めるのです。
6週間前にはできない子と思っていた子が今やできる子になっているのです。そういうことは何度もあります。私たちが恩恵を受けている肩書きのどれほどが実際は偶然にもたらされたものかと思います。
また動画によって個別に学習出来るようになることのメリットも上記のように語っています。
反転授業のメリット

サルマン・カーン氏のプレゼンテーションでも述べられていますが、反転授業を導入することによるメリットはどんなものがあるでしょうか。
生徒が自分のペースで学習出来る(学習の個別化)
ビデオで学習が出来るので、わからなければ何度も戻って学習出来ます。復習したい動画を見れば簡単に復習をすることが出きます。他の生徒や教師に遠慮する必要がなく、自分のペースで学習出来ることがメリットです。また、学習履歴に基づいて出題を最適化するといったサービスやデータ分析の取り組みも行われており、アダプティブラーニングと呼ばれています。
質の高い講義を受講出来る
ビデオ講義は必ずしも担任の教師や、普段接する教員である必要はありません。
プロの講師の授業をビデオで流せば指導レベルに差がつくことなく、均一の質の高い講義を受けることが出来ます。東進ゼミナールでは、一部の有名講師の授業動画を生徒に見せたり、リクルートが運営するスタディサプリも有名講師の授業動画を安価で見られるようになっています。
教師が生徒のサポートに注力出来る
授業時間を一方的に講義の時間にあてなくなることで、生徒の進捗把握や理解度チェック、サポートに注力出来るようになります。
クラスや学級内で学力格差がある場合、教師がどのレベルに合わせて講義・授業を行うのかという問題が発生しますが、反転授業では個別の生徒にサポートをすればよいので、そういった問題は発生しません。
知識のアウトプットを行う場が出来る
知識のインプットは事前に行うため、その知識を活用する場を設けることが出来るようになります。問題演習によって理解度を深めたり、議論を行うことで思考力が養われるといった効果があるでしょう。
反転授業のデメリット
良いことづくめに聞こえる反転授業ですが、デメリットはないのでしょうか。
デバイス、ネットワークなどのICT環境が必要である
反転授業を行うためには、知識をインプットするための動画やビデオを見る端末が必要ですし、ネットワークにつながっている必要があります。大学や社会人の学習の場面ではまだしも、公教育で導入するには公平な運営が望ましく、家庭環境に依存してしまう可能性があります。
費用は自治体が負担するのか、ネットワーク、管理方法はどうするのか?どういったデバイスを導入するのか?といった運営にも負荷がかかります。反転授業を導入するには、こうしたICT環境の整備が非常に重要になります。
自宅、保護者のサポートが必要(年齡が低いほど)
自宅でのビデオ学習やインプットが必要になるため保護者や家庭のサポートが重要になる。授業は自宅での学習を前提としているため、ここがおこなれていないと、学習が非常に困難になります。
反転授業で学習を行う場合、家庭/保護者の理解、サポートが重要になります。特に年齡が低いほどその重要性がますでしょう。
教師のスキルが必要(必要となるスキルが変わる。ファシリテーターのような役割)
教師、先生の役割も変わります。教室で授業を行うスキルではなくなり、教室で生徒に演習やディスカッションを円滑に行ってもらうファシリテーションやコーチングのスキルが求められるようになります。
授業動画に関しては、動画用の授業を行い作成するスキルも必要になります。ただこの動画作成のスキルに関しては、必ずしも先生・教師が行う必要はなく、公開されているものを活用することで、場のファシリテーションやコーチングに注力することが出来ます。
イノベーションのジレンマで有名なハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授は、著書「教育×破壊的イノベーション」の中で、コンピューターベースの学習によって教師の役割は教えること(ティーチング)から、生徒を支えること(サポート・コーチング)に変わっていくと主張しています。
また、デメリットというわけではありませんが、アメリカの大学や大学院、日本でもMBAなどでは行われている、課題図書を課され、その課題に関する議論を行うような授業形式を行っているものからは、本が動画に変わっただけで、動画の方が本よりも学習効率がよいという保証はないという指摘もされています。
ICT環境の整備によって、反転授業の導入事例も増える?

先日、渋谷区では全ての公立の小中学校でタブレットが導入されることが決まり(SIMも同時に配布)、持ち帰りも自由にするという施策を行うことがわかりました。この渋谷区の取り組みは全国で初ですが、ICT教育の環境整備は進んでいくでしょう。
反転授業を理解する上でおすすめの本
反転授業を行う上での事例や、実際の進め方など、反転授業を考えるにあたって参考になる本や書籍は多数出版されています。その中でおすすめのものをピックアップします。
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