2020年の学習指導要綱改訂にあたり、文部科学省は「主体的・対話的で深い学び」の重要性を強調しています。そんな中、アクティブラーニングの手法として有力なのが、「PBL」です。PBLはProblem-based Learningの略で、日本語では課題解決型学習や問題発見解決型学習などと訳されています。

PBLはアクティブラーニング!アクティブラーニングとは?

現在日本における教育のなかで、「アクティブラーニング」はキーワードとなっています。そもそも、アクティブラーニングは、受動的に知識を蓄積するだけでなく、知識を自ら発見した課題の解決に利用する能力を養うのを目的とした教育の手法です。文部科学省はアクティブラーニングを以下のように定義しています。

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。

(出典:文部科学省(2012)「新たな未来を築くための大学教育の質的転 換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申) 用語集」

教育の質を向上し、グローバル化する社会に即した人材を育成するために、文部科学省はこのような策を施行しています。ゆとり教育からの脱却を図りながら、それ以前の詰め込み教育とも異なる教育を実践する方針です。

PBL(Problem-based Learning)の概要

PBL(Problem-based Learning)は、生徒・学生中心の教育手法で、生徒・学生が答えが一つに決められていない問題を解決する経験を通し、科目について学ぶものを指します。PBLが開発されたマックマスター大学のウェブサイトによると、PBLは問題(課題)が学びを駆り立てる学習であり、そこでは、生徒・学生は知識を得る前に問題を与えられます。生徒・学生は問題を解決するために知識の獲得が必要であることに自ら気づくのです。

三重大学高等教育創造開発センター(2007)によると、PBL教育の基礎要件は以下の通りです。

1.学生は自己学習と少人数のグループ学習を行う
2.問題との出会い、解決すべき課題の発見、学習による知識の獲得、討論を通じた思考の深化、問題解決という学習過程を経た学習を行う。
3.事例シナリオなどを通じて、現実的、具体的で身近に感じられる問題を取り上げる
4.学習は、学生による自己決定的で能動的な学習により進行する
5.教員はファシリテータ(学習支援者)の役割を果たす
6.学生による自己省察を促し、能動的な学習の過程と結果を把握する評価方法を使用する

PBL推進者には、従来の一般的な教育手法を「系統的学習」と負のニュアンスとともに呼び、PBLをそれと対比するものとして位置付ける人もいます。

PBL(Problem-based Learning)のこれまでの経緯

PBLははじめにカナダ・マックマスター大学の医学プログラムで開発されました。医学教育の問題点として、最初の3年間で習得する膨大な知識と、実際の医療の業務との関連性が見出しにくいということがありました。

そんな中、PBLは生徒に知識と実務の関係を実感させ、学びへのモチベーションを維持しチームへの貢献の重要さを伝えるために効果的なカリキュラムとして考案されたのです。その後、他の医学学校や大学の学部教育で採用され、教育学、経済学、経営学、工学などの分野でも活用されています。

PBLって実際に何をするの?

PBL(Problem-based Learning)型授業の具体例を紹介します。

まず、マックマスター大学の教科書に記載されている例は次のようなものです。
従来の系統的学習では、まず物理の授業で電気に関する一般的な事項が説明され、その中で電気の熱エネルギーへの変換が説明されます。その後、電気機器の構造、実験するためのテスターの使い方などを学びます。このように体系的に勉強をした最後に、故障したトースターを修理する方法を考える課題が出されます。

これに対し、PBLでは、「故障したトースターがある。これを直すか、それが不可能であれば少しでも利用可能にしなさい」という課題のみが提示されます。生徒・学生は、自ら必要な知識を洗い出し、学び、課題の解決に取り組むのです。

また、日本の事例では、甲南大学で、自らが教師であるという仮定のもと「高校生を対象とした、実際の授業で利用できる電子教材」の制作(出典:井上明(2005)「PBL(Problem-Based Learning)による問題発見解決型情報教育」)が課題として学生に与えられました。ここでは、対象の生徒や教科、学習目標などの授業内容のみならず、それらの項目自体が指定されず、すべて学生が細かな課題を見出し、解決に取り組みました。

PBLの効果

PBLを導入・推進している三重大学は、PBLの利点として以下の5つを挙げています。

  • 能動的な学習法であり、成人教育に適している
  • 身近な問題を提示するので、学生が興味を持ちやすい
  • 得られる知識が、問題解決レベルの深い知識であり、応用力が身につく
  • 学習した知識が永く留まる
  • 小グループ学習なので、(1)コミュニケーション能力が高まり、(2)人間性を磨くことができ、(3)チームで達成する練習になる

(出典:三重大学 地域人材教育開発機構「学生向けPBLガイド 1.PBL式の授業について」)

また、PBLを用いて情報教育を実施した甲南大学では、問題発見解決、自己学習、情報リテラシー、対人技能の項目で、非PBLの授業と有意差があり、PBLが有効だと認められました。(出典:井上明(2005)「PBL(Problem-Based Learning)による問題発見解決型情報教育」)