プログラミング必修化へ向けて「先生・保護者ができること」 みんなのコード代表利根川氏インタビュー

一般社団法人みんなのコードを立ち上げ、公教育でのプログラミング必修化の推進を行う利根川氏に「2020年のプログラミング必修化に向けて先生方・保護者の方ができること」についてお話しいただきました。

Hour of Code Japan 2016 TOKYO開催レポート

2016.12.27

公立小学校におけるプログラミング教育 先生方に求められる役割とは

—今年も残り1ヶ月ですが、今年は利根川様にとってどんな年でしたか

年始と年末で大きく風向きが変わりました。

4月にプログラミング必修化が決まり、今日のHour of Code Japan 2016 TOKYO EXPOのようなプログラミング教育普及イベントに先生方が134人来てくださっています。もし昨年開催していたらせいぜい20人くらいだったのではないでしょうか。しかし全国で小学校が約2万校、先生方が約40万人いらっしゃいますので、始まったがまだまだ小さいという感じです。

—みんなのコードがおすすめるプログラミング教材、Hour of Codeは子ども達への技術的なアドバイスもプログラム内に含まれています。プログラミングの授業の際、教師はどういったことをすればいいのでしょうか。

教師の方に向けた技術的なアドバイスもプログラム内に含まれています。とはいえ挫折しそうな子へ「頑張ってみよう」など声かけで支えることはその場にいる人間じゃないとできないのではないでしょうか。授業の最初に実際にお手本を示すことも先生の役割の一つです。

またコンピューターやプログラミングがどういう風に社会に使われているのかといった関連づけは、先生が授業として教えてあげた方がいいと思います。プログラミングの前提というのでしょうか。

文部科学省ではプログラミングのスキルを学ぼうというよりも社会に役立つツールや思考力を養うツールとして捉えようといった話になっているので、プログラミングをするだけでなく、授業の目的設定や単元の導入・振り返りが必要でしょう。もし振り返りがないと単にゲームを楽しんでお終いになってしまうので、先生には「実はプログラミングが自動運転にも使われている」などといった話をしていただくと良いのではないでしょうか。

あとはテクニック的なことですが、例えば活動の進むスピードが早い子は早い子で集め、ゆっくりな子はゆっくりな子同士で集めて授業を行うと、授業が成り立つといったことはあると思います。そういう風に授業のファシリテーションというところに価値は変わってくるのかなと思います。

—吸収の早い子には別の課題を与えるということでしょうか?

Hour of Codeは導入部分で1時間くらいはあるので、次の課題を与えるというよりはその課題の中で早い子は早い子で集めるという形で大丈夫です。Hour of Codeは画面の中でどんどん課題が出てきてコンピューターの中で授業が進んでいくので、進むのが早い子にも楽しい授業になるのではないでしょうか。また、先生に変わって他の子ども指導するのも良いと思います。

—では先生方は授業中、ゆっくりめな子に対してどう支援を行えばよいのでしょうか。

ゆっくりめな子も画面の中に向いているので本人は本人で頑張って取り組んでいます。ゆっくりめな子に対しては正解を教えてあげるというよりも一緒に課題を考えたり、くじけそうになったときにケアをしてたりするといいでしょう。

—早い子・ゆっくりめな子の個人差は、公立校ではどれくらいありますか。

2倍では済みません。20分終わった段階で1時間分のコースに取り組む子と、まだ20ステージの内7番に取り組んでいるという子がいたりします。

—ご家庭にパソコンやタブレット端末があるかないかといった条件で、プログラミング教育が教育格差を広げてしまうのではないかと言う懸念の声があります。それについてはいかがでしょうか。

ありますね。このままでは広がってしまうのではないでしょうか。家庭もそうですし、自治体間格差も深刻でして、1人1台全学校にタブレット端末を導入した自治体もあれば、全校児童300人に対し15台しかない学校もあります。

—これに対してはどう対処していけばよいのでしょうか。

上が伸びるのは止める必要ないと思っています。下をどうやって支えていくかというところで文部科学省さんと必要性を訴える、逆に少ない機材でもどういう授業ができるのかという知恵の使い方はあります。

プログラミング教育普及に向けて 今後の課題と未来への期待

—プログラミング未経験の先生方の不安の声も挙がっていますが、これについてはいかがでしょうか。

みんなのコードとしても全国の学校を直接サポートすることはできないので、研修会が中心となります。

しかし小学校の先生のすごいところは「なんでもやってしまう」というところでしょう。国語算数といった科目だけでなく、水泳や裁縫までも先生が教えますよね。先生方は自身で心配するのですが、実際研修会でプログラミングに触ると「思っていたより大丈夫だ。」という声をよくいただきます。そのため私は、そこはポジティブに思っています。

—教育格差への懸念、教員のプログラミングへの不安などありましたが、プログラミング教育普及に向けて1番の課題はなんでしょうか。

先生が前向きになるところであると思っています、が、そこもなんとかなる気はしてきています。しかし学校業界の1年に1度のPDCAサイクルでは2020年のプログラミング必修化まであと3PDCAしかありません。あと3PDCAで北は北海道から南は沖縄、都市部や離島、また大阪市や横浜市のように市内に300校学校があるところなどに対して普及させていかなければなりません。

先ほども申し上げましたが、学校数にして2万校、先生方40万人、そのほぼ全員がプログラミング未経験という状況で、先生方の年齢にも幅があります。

他国と比べ日本は人口も多いですし、この規模でプログラミングを必修化させていくということは世界的に見ても稀です。アメリカも州や郡ごとに独立した指導要領があるので、日本のように全国統一で2万校というのは珍しいです。

—この課題解決のために、先生にできることはそれぞれなんでしょうか。

今日のようなシンポジウムから始まり、次は研修会、次に研究授業をやりましょうといった流れをお勧めしています。まずはこのシンポジウムにいらしてほしいです。

—最後にみんなのコードの理念についてお聞きしたいのですが、「あらゆる領域で活用されるテクノロジーを理解する教養としてのプログラミング教育」とは具体的に何を身につけるものでしょうか?

試行錯誤中ですが、「プログラミングってできるものなんだ」ということと「プログラミングって自分と関係のあることなんだ」ということですかね。プログラマーだけがやっていればいいというものではなく、普通の仕事で普通に使うものとして捉えてほしいです。PowerPointerやExcelerという仕事はないですよね。そのようにプログラミングについても当たり前のこととして捉えていただければいいなと思っています。

—当たり前のこととして捉えるというのは子ども達にとっても先生にとってもということでしょうか?

先生もそうですが、一番は子ども達にとってです。保護者の方も、恐れずにやってほしいと思います。もし子どもがプログラミングに興味を持ったら応援してあげてほしいです。


教員志望の身でありながら、プログラミング教育にどう関われば良いかイメージが湧かなかった筆者にとって「プログラミングをするだけでなく、授業の目的設定や単元の導入・振り返りが必要」というお話は大変勉強になりました。保護者の方にとっても、例えば「学習が早くない生徒に対しての支援の仕方」などプログラミング教育のヒントがたくさん散りばめられたお話でした。