デザイン思考と、オンライン教育プロダクト開発ーワシントンDC発の教育ベンチャー「Ever-Fi」

日本にもありますが 、アメリカの色々な都市にはMeetUpというNGOが、各都市で行なわれている様々なテーマのイベントを統括しているウェブサイトを運営しています。言語を学ぶイベントから美術や写真を楽しむイベント、ハイキングやサイクリングのイベント、また起業家が集うイベントなど色々あります。

そのグループの一つにアクションデザインというものがあり、昨年11月に仕事帰りにイベントに参加してきました。アクションデザインは、ユーザーの思考および行動様式を反映したプロダクトおよびプロセスデザインのことを指します。

私の参加したイベントではどのようにユーザー中心のデザイン思考を活用してオンライン教育コンテンツを作ったか、ということについて、Ever-FiというワシントンDC発のオンライン教育スタートアップの会社が話をしてくれました。

 

ワシントンDC発の教育ベンチャー「Ever-Fi」とは

2008年に創業したこの会社は社員約140名で、 主に学校の通常の授業では教えてくれない、けれど生活する上で大切な”Critical Skill”と言われるお金の教育、倫理の教育(アルコールについてなど)、市民の社会参加 に関する教育、そしてデジタルリテラシーにフォーカスしてオンライン教育を提供しています。

EverFi

Ever-Fiの投資家にはTwitterの創始者Evan WilliamsやAmazonの創始者Jeff Bezosの投資会社Bezos Expeditionsも含まれています。

ユーザーは小学生から高校生、大学生まで幅広く対象としており、主に先生や学校と提携してコンテンツをカリキュラムの中に入れてもらうというアプローチをとってコンテンツの展開をしています。

この記事ではプロダクト作り、コンテンツ作り、プロダクト展開方法の3つの観点からEver-Fiを紹介したいと思います。

 

① プロダクト作り

この会のテーマでもある、ユーザー中心のデザイン思考を取り入れたプロダクト作りを行なったEver Fi。

実際に何をしたかというと、ユーザー(先生および生徒)からのフィードバックを繰り返し取り入れ、ユーザーデータを分析し、 プロダクトの効果および使いやすさをとことん検証し、プロダクトを作り上げてきました。

そのためコンテンツをアップロードした後も何度かユーザーインターフェースを変える事になりました。この会では彼らが ユーザーから学んだプロダクト作りにおけるレッスンを公開してくれたのでシェアしたいと思います。

  • 先生は普段でも忙しく時間がないため、シンプルなユーザーインターフェースが重要
  • プロダクトを作る際は、ユーザーエクスペリエンスにフォーカスして、ユーザーエクスペリエンスの全てを測定し、何が機能して何が機能しないかきちんと検証する
  • 生徒は学校で学んだ知識はほぼ全て忘れてしまいがちなので、知識ではなく学習経験にフォーカスし、プロダクトを作るようにする
  • プロダクトの評価を実施する場合は、プロダクトに関するユーザーの行動様式だけでなく生活での行動の変化も測定する
  • ユーザーの行動様式の変化は知識を向上させるのと同じくらいに重要なので、行動様式を変化させられるようなプロダクト作りを心がける
  • 学びを楽しい物とするようにプロダクトを作る
  • ユーザーフィードバックを測定する場合、教育コンテンツで何を教えたか、ではなく生徒が何を学んだか、という質問をし、あくまでもユーザー中心のプロダクト作りにこだわる
  • 測定していないことについては何もわからないため勝手な推測のみでプロダクトを作らない

 

②コンテンツ作り

Ever-Fiは元教師をスタッフとして迎え入れてコンテンツ作りを行ない、またコンテンツによっては信憑性を高めるために様々な企業とパートナーシップを組んでいます。

例えば、お金の教育ですが、内容の信憑性を高めるために地元の銀行であるキャピタルバンクにコンテンツ内容を保証してもらっています。そのかわりキャピタルバンクおよびスポンサーとなった企業には教育マテリアル上に広告スペースを提供しています。

 

③プロダクトの展開方法

プロダクト完成後、 実際に使ってもらう、というのが一番のチャレンジとなるオンライン教育ですが、Ever-Fiも色々と苦労したようです。

彼らの場合、まず全米の教育カリキュラムをマッピングし、どのようにEver-Fiのオンライン教育コンテンツをカリキュラムに入れられるか検討し、戦略を練りました。そしてまずは先生や地区レベルから営業を開始し、カリキュラムに取り入れてくれる先生からの合意を取り付け、成功事例を増やし、その後どんどんと展開し、州レベルでもカリキュラムに取り入れてもらえるまでになりました。

最初は先生に授業に入れてもらう事が重要なので、先生大使プログラム(Teacher Ambassadors Program)を作り、Ever Fiをうまく活用している先生を大使として任命し、Ever Fiユーザーのコミュニティー作りをしてもらいました。

UX中心のプロダクト開発が、慕われるプロダクトを生む

オンライン教育業界が成長段階にある今、オンライン教育プロダクトの中には、作り手の意向ばかりが反映された物も中にはあるのではないでしょうか。ただ、長く効果的に使ってもらえるオンライン教育のプロダクトを作るには、ユーザーエクスペリエンスを重視したプロダクト作りが重要ではないかと思います。

そういった意味で、ユーザー中心のデザイン思考(IDEOという会社が教育者向けのデザイン思考のツールキットも作成しており、無料で公開されています)を取り入れたプロダクト作りを徹底して行う事で、よりユーザーが長く楽しく使えるプロダクトができ、同時に教育現場の問題を解決することもできるのではないでしょうか。

そしてプロダクトが完成した後も継続的にユーザーフィードバックを取り入れる仕組みを作り、ユーザー思考のプロダクト改善を続けていくことで更にユーザーから慕われるプロダクトとなっていくのではないでしょうか。

〈Saori Imaizumi Technology&Innovation for Education Specialist〉

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ABOUTこの記事をかいた人

EdTech(教育×テクノロジー)をテーマにした「EdTech Media」、教育業界に特化した求人サービス「Education Career」を運営する、株式会社ファンオブライフ代表取締役。 EdTechのムーブメントを、情報と人材の面から支援している。