【レポート】EdTech JAPAN Pitch Festival 「EdTechから教育イノベーションへ」シリコンバレーレポート 尾島 菜穂氏

2014年2月16日、日本のEdTech企業が集結し、ビジョンやノウハウをわかちあうプレゼンイベント「EdTech JAPAN Pitch Festival」のVol4が開催されました。当日7名のピッチの間に行われた、シリコンバレーで勤務するベンチャーキャピタリスト尾島 菜穂氏のシリコンバレーレポートの内容をまとめました。

「EdTechから教育イノベーションへ」シリコンバレーレポート 尾島 菜穂氏

OLYMPUS DIGITAL CAMERA現在は、IT分野のスタートアップの投資を行っている。EdTechにもかなり関心を高く注目してきた。21世紀に子ども達が必要なスキルとは何かというのが真剣にディスカッションされて、色々なアイディアと実践が行われている。シリコンバレーで起きている状況をシェア出来ればと思う。

100年以上教育にはイノベーションが起きていないと良くアメリカでも言われる。シリコンバレーから教育にイノベーションを起こそうという動きが高まっている。今日は、①アメリカのEdTechの魅力 ②EdTechの全体像、③イノベーションのエコシステム、④EdTechから教育イノベーションへ、という構成で話をしたい。

アメリカのEdTechの魅力

OLYMPUS DIGITAL CAMERAとにかく、アメリカの規模と影響力の大きさが魅力。アメリカ全体で、ベンチャー投資の年間投資額は約2.9兆円。アメリカでの教育分野でのベンチャー年間投資額は、1151億円。日本でのベンチャー年間投資額は全体で1026億円。つまり、アメリカでの教育分野への投資額は、日本での全てのベンチャーに投資される金額を上回っている。それでもアメリカでは全体のたった4%程度にすぎない。アメリカでもEdTechへの投資は盛り上がっている。

ポイントは2つで一つは、ITバブル崩壊後、徐々に投資額が持ちなおし、増加傾向にあること。2012年から1,000億円を超えている。

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2点目は、大型の資金調達を行っているスタートアップも多いこと。上記の写真(スライド)は、25億円以上の資金調達を行った教育関連のスタートアップを投資額順に並べたもの。他にもカーンアカデミーのようなNPOも元気で、億単位で資金を集めるNPOも存在している。ビルゲイツ財団などの支援も大きく、教育分野だけで40億円の資金を投じている。

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次に影響力が大きいということに関して。シリコンバレーのスタートアップは最初からグローバルを狙っている。国以上に言語圏でマーケットを捉えている。コーセラは公開から2年で、190カ国に住む500万人以上に提供されている。7割近くが海外の利用。シリコンバレーでは、まずは英語圏、スペイン語圏、中華圏と人口が多いところから進出していくという傾向が見られる。

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シリコンバレーには、世界中から投資家・起業家が集まっている。Imaginek12の提供するスタートアップ支援プログラムには、世界中から400チームの応募があり、通過した13チームのうち4チームは海外(インド・スペインなど)から。シリコンバレーはアメリカのものではなく、世界のものだという意見もある。

EdTechの全体像

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全てを網羅的に語ることは出来ないので、MOOCs(ムークス)を始めとした、オンライン教育を例にとって話をしたい。

網羅的な表ではないが、左上はコーセラとedX、無料で有名大学の講座を提供している。ビジネスモデルという観点ではまだまだ試行錯誤中。

一方、右上は、仕事に直結するスキルを有料で提供するUdemyやLynda.com。こちらは、ユーザーからの課金に成功している。Lynda.comの創業者は、「利益は出ているがスケールアウトするために資金調達を行った」とカンファレンスで語っていた。

UDACITY(ユダシティ)を真ん中においたのは、以前は無料講座が中心だったが、今はGoogleやセールスフォースなどの勢いのIT企業と組んで実用的な有料のコースが増えてきている。1年後、3年後にはそれぞれ全く変わったモデルになっているのではないか。

下に位置する、学位の取得出来るサービスにも注目が集まっている。

左下に分類したのは、既存の大学と提携しながらオンライン教育を提供しているスタートアップ。アメリカは学費が高騰しているのが問題で、それを解消しようとしている。2Uは既存の大学向けにオンライン講座を作っている。straighterlineやAmericanHonorsは2年間オンライン講座を受けたあとに、大学に転籍することを可能にしている。

右下は、より職業に直結するカリキュラムを提供するオンライン大学。ミネルバプロジェクトは今年の秋に開校予定の大学。グローバルリーダーの輩出が目標。オンラインで授業を行う。最初の1年間は、サンフランシスコの寮から始まり各国の寮を渡り歩く共同生活を行う。

イノベーションのエコシステム

OLYMPUS DIGITAL CAMERA一般的に言われるイノベーションのエコシステムを紹介。有機的にそれぞれが繋がっている。人材ネットワークも豊富で、アイデアにお金を出すエンジェルも豊富。また、イグジット先となる企業も豊富に存在している。いわば、お金と人が好循環するエコシステムが出来あがっている。

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シリコンバレーで驚いたのが毎日数えきれないイベントが行われていること。ローカルなイベントが行われており、企業を超えたネットワーキングを可能にしている。ほとんどが参加費無料。起業家や先生、エンジニアも参加している。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA学校教育は、意思決定者と利益享受者が異なる、特殊なマーケットと言われていた。学校が何かを購入するには、予算獲得の必要性があり時間がかかって難しい。お金に余裕のないスタートアップは持ちこたえられないと言われていた。

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ところが数年前からエコシステムが出来始めた。教育分野に詳しいエンジェル投資家やインキュベータが出来てきた。学校とのパイプ役にもなっている。学校教育システムのエコシステムのポイントを3つ挙げるとしたら、

①ビジョンの共有

21世紀の子ども達の為に必要な教育は何かというディスカッションが行われており、論調としては個人に最適化された教育を行うべきというものが目立つ。大きなビジョンが共有されている。

②トライ&エラー出来る環境が整ってきたこと

まだまだ学校に入るのは苦戦しているが。徐々にバージョンアップしている。フリーミアムモデルで、まずは無料で先生に使ってもらい、その後口コミで広げ、学校毎に導入していくというパターン。更に自由度が高い、チャータースクールで積極的にサービスが使われる事例もあるよう。

③スタートアップに転身する先生が増えていること。

教師の給与が低いため、転職希望者が多い背景もある。ローカルなイベントにいくとスタートアップに転向希望の先生を良く見かける。

EdTechから教育のイノベーションへ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA最後にEdTechにこだわらず、教育イノベーションという観点で紹介を。先進的な事例は、チャータースクールのサミットパブリックスクールズ。教師は教えるという立場から、生徒のメンターとなり、個人のペースでの学習が基本でグループプロジェクトが中心となっている。教師自身もどれが生徒にとって効果的か分からないから、リーンスタートアップと同じで、試して改善してを繰りかえしている。

カーンアカデミーのカーンさんは講演で、「教育は100年に1度の大転換期にある」と語っている。アメリカの教育の面白さはビジョンを掲げて、トライ&エラーを繰り返しながらどんどん進化をしていること。

 

シリコンバレーにおける教育のエコシステムの話が非常に興味深いレポートでした。特に印象的だったのが先生からスタートアップの転身が起きているということ。日本ではなかなかイメージしづらい状況と感じたが、日本独自のエコシステムというのもあり得るのだろうと考えるきっかけとなるレポートでした。

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    EdTech(教育×テクノロジー)をテーマにした「EdTech Media」、教育業界に特化した求人サービス「Education Career」を運営する、株式会社ファンオブライフ代表取締役。 EdTechのムーブメントを、情報と人材の面から支援している。