【レポート】新経連×SHAKE100 なぜ教育が今熱いのか~教育×ITの未来~【後編】

新経済サミット×SHAKE100のタイアップ企画である【新経連×SHAKE100】なぜ教育が今熱いのか~教育×ITの未来~ が開催されました。後編では、5つのトピックについて行われたパネルディスカッションの模様をレポートします。

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パネラー

  • 株式会社スマートエデュケーション 代表取締役社長 池谷 大吾氏
  • 株式会社ドリコム ソーシャルラーニング事業部 部長 石井 学氏
  • 株式会社ベストティーチャー 代表取締役社長 宮地 俊充氏
  • 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社 パートナー 河野 純一郎氏

 

Question.1 いま何が教育×ITで「アツい!」のか? 

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Q.教育分野の注目度があがってきているが、なぜ教育領域に取り組むことになったのか? 

石井氏:ソーシャルゲームのうねりはあったが、次のうねりは何か?ということを企業として考えていた時に、ソーシャルゲームのナレッジと共通するものは何か?と、2010年ごろに社内でディスカッションをしていた。

コミュニティの存在が継続にきわめて重要だということは見えていた。コミュニティの中では、共感や競争が高められるということがわかっていた。同じ目標を目指すようなコミュニティはアナログの世界にも合ったし、皆さんも経験あると思うが、これらは基本有料で提供されていた。ここをフリーミアムで一気に広げられないかと考えた。その当時でも、スマホが一気に広がることも明らかに見えていたので、それをいかせるものを探していたというのもある。「継続させたい!」という思いはソーシャルでも学びでも同様で、この思いを活かせる分野として、チャレンジした。

 

池谷氏:EdTechとかスタートアップという言葉はないころに取り組んでいた。CAの子会社社長ではなく、自分で起業したい!というところからスタート。家で浪人をしていた時に息子がヒントをくれた。何かというと、スマホをよく触っていたこと。ガラケーでこれはなかった。ガラケーにはディスプレーとキーボードで2つあって、子どもには難しい。そういう意味で、スマホは子どもや、デバイスに慣れていない人のためのデバイスだと思っている。

また、教育産業は隙だらけ。未だにアナログしかない世界。今までも教育へのIT活用はいろいろ頓挫してきているが、ブロードバンドでデバイスなどの環境もそろってきた。いよいよ、一気にイノベーションの起こる下地ができていると感じている。我々のようなスタートアップやベンチャーでもベネッセのような大企業に挑戦できる。今こそ革命を起こすチャンスと考えている。

 

Q.英語というドメインを選ばれた理由は?英語のサービスはたくさんあるが、プレーヤーとしてどのように感じているか?

宮地氏:元々教育をやろうと決めていたわけではない。自分は会計をやっていたが、英語をしゃべりたいという気持ちはあった。英語をしゃべるにはいいサービスがない。日本人の95%が喋れないという話がある。これをやったら皆が喋れるようになるというサービスが作れれば良い、と考えている。

石井氏:トレンドとしては、発音系のものが増えてきた印象がある。個人的には、オンラインSkype英会話などもあるのだが、自分たちもアプリやソーシャルの世界で発音するサービスを出したいと思っている。

結局しゃべったり、聞き続けるという活動をしてきたことが、英語をしゃべれる人の共通項だったりする。ただアプリにむかってしゃべるというのは続かないと思うので、それを継続するものに仕上げていければ、という思いがある。

 

Q.今、一番アツいドメインはどこだと思いますか?なぜスクーに投資したのか?

河野氏:投資のテーマとしての教育では、その教育サービスによって解決しようとしている問題の大きさ、を見ている。投資で儲かるということはもちろんあるが、世の中を良くしたいという気持ちが大きい。国力を増強したい思いがある。先ほど池谷さんもおっしゃったように、教育はアナログが多分に残っている世界なので、ITでもっと良くできるだろうと考えている。

米国ではカーンアカデミーやコーセラや無料でできるものがたくさん出来てきた。一方、日本は元々教育水準も高い。日本の場合、コンテンツにアクセスできないということは問題ではない。

日本は学ぼうと思えば学べる環境は既にある。米国は格差の大きな社会なので、学びたくても学べないという現状がある。だからこそ、オープンエデュケーションが流行る。日本の場合は、学ぼうと思えば、素材はいくらでもある。では、なぜできないか?といえば、楽しくないから。無料でも楽しくないものはやらない。 

インターネットを使うことによって、圧倒的に面白い学習体験を生み出していけなかなければ、学ぶ人は増えないのではないか。体験に寄せて考えていかなければならないと考えている。

例えば、社会人として今後に漠然とした不安感があったとしても、なかなか何か一歩進むことはできないのでは?「面白い」の先に「知」があるのではないかと考えている。好奇心をもって、「もっとこういうことを知りたい!」という人を作れれさえすれば、あとは学ぶツールはたくさんあるだろうと感じている。

池谷さんがやっているようなサービスは、両親の膝の上で、リズム学習をした体験はその子供に根深く残るはずで、そういった学習体験をもっていると、数学でも英語でも学習できるはず。今の課題は、意識意欲の問題であるから、そこにフォーカスしていくのが良いのではないか。

Question.2 注目している人物/企業/サービスは(国内外)?

石井氏:nanapiのようなQAサービス。学びの好奇心発生の源泉はいろいろだが、「Why?」と思った時に、リアルタイムに解決してくれる、ということはITがもっと進化させるのではないか。LINE Qのように、すぐに返答が来るようなものなど。Yahoo知恵袋のようにしばらく待つのではなく、すぐ来るのがポイント。これは、モチベーションの維持の問題を解決してくれる1つなのではないか。クエスチョンから始まる形のコミュニティ形成は面白いと感じている。

 

池谷氏:海外を見ている。データがよく出る世界だが、Apple、Googleの教育カテゴリの売上を見ると、70%がキッズ。日本対世界でみると、規模は日本7%、海外は93%。そうなると、7%のトップでいても仕方ない。見るべきものは海外。ちなみに、日本の場合はキッズは60%くらいだったと思う。アジア、特に日本と韓国は英語の市場が大きいので。

海外のキッズアプリですごいのはディズニーとレゴ。マネタイズポイントが他にあるので、スマホは無料でいい。いくらかけて作ったんだ?というめちゃくちゃ良いものを無料で出してきている。

それ以外では、Toca Bocaというスウェーデンの会社をみている。6,000万ダウンロードという数を世界でとっている。自分たちとは、一桁違う。それは世界を見ているから。でも一方でTocaBocaが唯一売れないのは日本。インターフェイスが英語で受け入れられずらいのだろう。

宮地氏:正直あまり注目しているサービスはない。あえてあげるなら、海外のKnewtonコンセプトなどを見ると良いなと思っている。アダプティブラーニングを実現している。そういうことをやりたいと思っている。

河野氏:mana.boというオンライン家庭教師のサービス。いいチームを組んでいるというのが一番。

アメリカで流行っている反転授業は、日本でも普及するだろうと思っている。佐賀県の武雄市が実証実験するなど少しずつ広がっている。確かに家でオンライン学習をできるようにはなるだろうが、一人では解決しないものは出てくるはず。それをリアルのクラスで聞けば良いという話もあるが、集中力や学習継続できている瞬間に聞けるもの、補助的に使えるものとして非常に面白いのではないか。

先生の役割も変わるだろう。「壇上の賢人」ではなく、学習を促進していく役を担うように変わっていかないといけないのではないか。

 

Question.3 教育系サービスを開発する際のポイントは? 

宮地氏:教育に限らずだが、自分が欲しい物を作るということ。受験などであれば、自分が欲しかったものを作るなど。そういう自分の感覚を大事にしている。教育系の人は、「これしかない、これがライフワークだ」というようにやっている人が多い気がする。ベストティーチャーでも英語に夢中の人が集まっている。過去苦労したことがある人など。実際、自分の感覚しか強みがないと思っている。

池谷氏:難しい質問だが、教育をやっている人は、原体験派が多い。それが好きだから。とはいえ、自分のチームは自分しか子どもがいなかった。ポイントはイノベーションかどうか?だろう。無料だとか、ITだとか、強みでそれしか訴求できないのは、イノベーションが足りない。インターネットならではのものを作らなければいけない。旧来の学びだって素晴らしいのだから、それ以上の価値を提供し、旧来の学びからでも取ってこられるようなものでないとダメ。

また、マネタイズポイントは予め決めておいたほうが良い。「まずは無料で集めて、後から考えよう」と思っても、遅い。一番ホットなタイミングで課金までもっていったほうがよい。

石井氏:既存サービスにないことを実現できているかが大事。本当に続くのか?を大事にしている。従来の学びでは続かない人を救いたいと思っている。その体験が、ある期間内でできるかが重要だと考えている。サービス体験を掘っていく時には、ユーザとして、自分がそう思えるかが大事だろう。時には外の人の話を聞きながら進めていく。

 

Question.4 教育サービスはどうマネタイズしていくのか?

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Q.教育×ITの分野ではどういうマネタイズの仕方がうまいのか。工夫の仕方があるのか。会場からの事前アンケートでも質問が多かった。
 

石井氏:マネタイズの手法の前に、どういう価値に対して対価を払ってもらうのか。今は、知るとか習うについては、価値がどんどん下がっていると思っている。それはフリーで得るものになっている。そこで対価を得るのは難しくなっていくと感じている。だからこそ、習った後の体験について価値を感じて対価を払ってくれるのではないか。フリーミアムにはチャレンジしていきたい。多くの人に場を提供できるので。

飯を食べるためには、もちろんサブスクリプションなどもあるだろうが、モデルありきではなく、そこに価値を感じるからこそのものだろう。広告収益もあるだろう。チーム型で、何かを達成したらあげるなどといった手法もある。あるゴールに対して何か表示がでるなどのものもある。インプット系はどんどんフリーに近づいているので、MOOCでも反転でも、アウトプットの場が本来の学びの場である、という世界になっていっていると感じている。アウトプットの場こそ、学びが多い。

 

池谷氏心構え編として話すと、がめつくマネタイズしていると言われるが、そんな簡単に儲からないよ、というのは心構えとして持っているし、もっておいた方が良いだろうと思う。投資家は簡単にソーシャルゲームと比べたりするが、そんな簡単にできるものではない。そういう投資家は帰ってくれという気持ちになる。ベネッセも公文も2年半でならずだ。ベネッセさんが福武書店から始まって徐々に大きくなってきたことを思えば、良くやっているとも言える。

実践編として、前職でゲームなどもやってきたが、月額課金は馴染みやすい領域だと感じる。提供側も当然毎月毎月払ってもらえるサービスを提供できる体制にしていかなければいけない。月額で成功している先人には学ぶ必要があると考えている。

宮地氏通学やリアルの先生にはお金を払うのに、オンラインになった途端マネタイズできなくなるのは事実ある。自分も月額課金が良いと思う。去年月謝を2000円増やした。しかし、有料会員比率は変わらなかった。顧客にとって、2000円を増やす負担よりも、やるかやらないかの差が大きいのだと思う。

そうであれば、入学すること自体にきちんと価値を見出してもらえるようにしなければいけない。月額はある程度高くても良いのではないか。そこをアシストするのは、ブランドではないか。メンバーフィーのような形が良いと思っている。

 

河野氏アメリカでは、人材紹介の形で企業からお金を取る。転職に有効な修了証を出すモデルはある。しかし、アメリカでもそこは模索中。学習効果が、きちんと効果として顕在化していくのは、時間がかかる。子どもが成長して・・という世界であれば10年単位の時間もかかるので難しい。しかし難しいのはやらない理由にはならない。

いかに心地よくお金を払ってもらうかという仕組みを作らなければならない。スクーでは、まだ多くはないが録画をいくらでも見られるようにするために、課金するということをやっている。

企業から福利厚生としてお金をもらうという形もある。eLや企業研修もあるが、面白くない。5000万くらいの市場はあるが、つまらない。それよりもスクーで一線で活躍する起業家の話を聞いてもらう方が、やる気がでるのであれば、それで良いではないか。グロービスで12万円のロジカルシンキングをやるよりも、スクーに500円払って社員をやる気にさせることができるのなら、それでいいではないかという話もあるだろう。企業にとっても、このように相対化することによって価値を見出してもらえるのではないか。

schooはアントレプレナーの評判もよく、登壇者も無料でやってくれるし、nanapiなどでは、会社でお金を出すから、社員に受けさせて欲しいという話になった。

 

Question.5 今後教育産業を変えていく大きな波、トレンドは? 

石井氏いかに学びの好奇心をあげるのか、先生の存在は、メンター的なものになっていくと思う。テクノロジーでこれらを解決することで拡大する。ゲーミフィケーション的なものが注目されるが、テクノロジーを使っていかに継続させるか。

池谷氏国内では資金調達しやすい状況になっていて、起業家には恵まれた環境になっている。特にEdtechでは。ただ、まだ今は世界的にもイノベーションは起きていないと見ている。市場は確実に伸びているし、お金も人も集まっているので、2,3年のうちに大きなイノベーションが起きる可能性が高まっていると感じる。 

宮地氏オンライン教育サービスにイノベーションは起こっていない。ファイナンス環境が良いので、お金が無くても起業できてしまう。自分がやらないと、他の人がうまくやってしまうだろう。自分は英語教材のプラットフォーム化をしたい。TOEICや英語の教科書などを全部入れるような。そしてイノベーションを起こしたい。

河野氏:既存の教育産業との共生、共創が重要になっていくのではないかと考えている。少子化で学習者の絶対数が減っているというのが現状。東大もコーセラにコンテンツを提供して、自分たちの知を世界にもアピールしないと、人を集められなくなるという危機感が醸成されてきているように感じる。そういう意味では組みやすい環境にもなっている。

ベンチャーで世の中変えるというが、ベンチャーだけで変えるのは実態としては難しい。長い時間をかけて今のポジションを作った大企業と組んで、変えていくことが重要ではないか。大手とベンチャーで国内で戦っていても仕方ない。世界にはもっと大きな動きがあるのだから。 

また、EdTechの領域は確かにお金を集めやすいのは事実だが、難しいので、原体験として強いものがあるかどうか。これがないと折れる。実現していく執念をもっていないと競争も激しいし、そこを投資家も見ているので、簡単ではない。

 

冷静に市場環境を見ながら、インタネットならではの教育機会の提供にこだわる姿から、従来の学びとはひと味もふた味も違う学習体験のできるイノベーションが生まれるのではないかと、大いに期待感が高まるイベントでした。「学びは最高のエンターテインメント」という言葉がありますが、まだまだ、学びは「つらい」「面白くない」という前提がある気がします。EdTechプレーヤーをはじめ、既存の教育機関とのコラボレーションなども含め、今後の動向に引き続き注目していきます。

▼前編は以下リンク先から

【レポート】新経連×SHAKE100 なぜ教育が今熱いのか~教育×ITの未来~【前編】

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    EdTech(教育×テクノロジー)をテーマにした「EdTech Media」、教育業界に特化した求人サービス「Education Career」を運営する、株式会社ファンオブライフ代表取締役。 EdTechのムーブメントを、情報と人材の面から支援している。