【レポート】ベネッセが開催!『新しい学びのシンポジウム第1回』vol.3

2013年12月16日ベネッセコーポレーションが東京目黒雅叙園で開催した「新しい学びのシンポジウム」のレポートの第3弾です。最終回となるvol.3では、以下の模様をレポートします。

 

第2部:テクノロジーで広がる子どもの体験

・『進研ゼミ中学講座』中学1年生の16万人が使う<Challenge Tablet>:自宅で塾体験(ライブ授業)

ベネッセ 中学生事業部部長 小野祐輝氏

・新サービス紹介:子どもと電子書籍 読書SNS体験

ベネッセ デジタル戦略推進部 デジタルビジネス開発セクションセクションリーダー 高橋淳氏

・第2部登壇者と出版社様、作家あさのあつこ氏、赤堀侃司氏によるパネルディスカッション

モデレーター:デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏

第3部これからの子供に広がる可能性

・ベネッセホールディングス 代表取締役社長 福島 保氏、あさのあつこ氏、赤堀侃司氏、モデレータ Quipper,Ltd代表 渡辺雅之氏によるパネルディスカッション 

※過去のレポートはこちら

【レポート】ベネッセが開催!『新しい学びのシンポジウム第1回』vol.1(http://edtech-media.com/2013/12/17/benesse-3/

【レポート】ベネッセが開催!『新しい学びのシンポジウム第1回』vol.2(http://edtech-media.com/2014/01/11/benesse-5/

 

第2部テクノロジーで広がる子どもの体験:進研ゼミ中学講座』中学1年生の16万人が使う<Challenge Tablet>:自宅で塾体験(ライブ授業)ベネッセコーポレーション 中学生事業部部長 小野祐輝氏 

進研ゼミの中学講座は、全国で73万人の受講生がおり、実に5人に1人に相当する国内トップシェアの通信講座です。冒頭、「進研ゼミが目指すところがよく表現できている」として、下記の映像が共有されました。


「これからは新しい学習サイクルで伸びていく」として、下記のサイクルを提示しています。

02ace631a6b3923f9afb888a34641455 

毎週映像授業を配信し、これをもとに学習意欲を高めながら、問題演習に取り組み、わからないところはカメラでとって質問することもできようです。

7abb764442d6a725a3cd4aacdd972f37

ライブ授業は、1授業の最大視聴者数3万8000人近い視聴者がおり、タブレット無しと比べた時の教材活用率は2.7倍にもなっているとのこと。

視聴者の評価でも90%の満足度が得られているようです。「直接人が教えるところが求められているのだろうと感じる」と、小野氏は言います。実際に「たくさんの中学生といっしょに学習に取り組むのがやる気の向上につながっている」、「自宅であることが、人目を気にせず勉強することができる」といった声が寄せられているようです。

benesse_event

小野氏は、「双方向性と一体感がポイント」だと言います。例えば、アンサーボタン。これは、ただ映像授業を見ているだけでなく、講師からの投げかけに対して、4択に答えるといったもの。他にも、皆が講師が発した特徴あるフレーズを一緒に書き込みだすとか、提出するテストを皆でやるとか、「ちょっと疲れただろうから伸びをしよう!」などのような、皆が同時にやっているという演出で一体感を醸成すると、活用が高まるということがわかってきているそうです。

bennesse_event

「デジタルをツールを活用することで、より参加型で個別性を高めた教育の可能性を感じている」 と小野氏は言います。

bennese_event

「大切にしたいのは中学生が”主体的に学ぶこと”デジタルによって広がる「参加型」「個別的」な教育の可能性。豊富なコンテンツに”ハイタッチ”をかけあわせて子どもたちの学ぶ喜びを高めていくことに貢献したい。」 

Challenge Tabletページ(http://chu.benesse.co.jp/tablet/)に詳細の案内があるので、興味のある方は是非ご覧ください。
bennese_event

 中学生のお子様をもつ保護者の方はもちろん、Edtechプレーヤーもベネッセの取り組みには要注目です。MOOCsやカーン・アカデミーなどが注目される中、国内で大きなシェアを持つ進研ゼミがこういった取り組みを加速することで、子どものITリテラシー向上にも貢献するのではないかと期待感を持ちました。

新サービス紹介:子どもと電子書籍 読書SNS体験「ブクフレ」 ベネッセコーポレーション デジタル戦略推進部 デジタルビジネス開発セクションセクションリーダー 高橋淳氏

新しい学びのシンポジウムでは、以前Edtech Mediaでもご紹介した「ブクフレ」についての紹介もありました。

ベネッセ、小中学生向けの電子書籍ストア「ブクフレ本」と読書SNS「ブクフレWeb」をリリース! 

「テクノロジーによって学ぶ環境が大きく変わっているが、読書体験も出版社ではない立場から、新しい体験が提供できないか」というR&Dからのアプローチで生まれたものがブクフレで、「進研ゼミなどの学習はもちろんだが、本でひとが成長する面も大いにあるだろう」と高橋氏は言います。

実際に「子どもは1、2時間勉強しているが、勉強だけで子どもが成長するものでもない、と感じているところもあるので、それを本を提供する形でできないか」という声があるようです。

そのような背景から、電子書籍、ソーシャルリーディング、ストアやビューワーといった機能をベネッセが提供するブクフレができたと言います。特徴は、親子モードの切り替え、親モードでの書籍フィルタ、安心充実のラインナップです。親子モードを切り替えることで、子どもは欲しい本について、親にリクエストを送信することができます。親はそのリクエストを承認することで実際に購買されるので、知らないうちに子どもが大量に本を買っていた、という心配もありません。また、書籍フィルタという機能をつけていますが「思いとしては、最終的には書籍について、家族で話してもらいたい」と言います。

安心した本屋で充実のラインナップとするため、怪しい本は排除するが、無菌の硬いものだけでは面白くないだろうともコメントしており、その線引はやや難しそうな印象を受けました。その他にも、本を読みながら、気持ちボタンをつけることができるので、印象的なページに気持ちマークをつけながら読書ができて振返りやすくなっている機能や、ブクトモとの交流機能もあるとのこと。 

モニタリングの結果から、ブクフレの導入により読書量の増加が増えたそうです。1ヶ月の調査期間ということもあり、新規性(目新しさ)で増えた面もあるだろうとはコメントをしていましたが、「iPadで読めて嬉しい」「普段読まないものを知れた」といった声が聞かれたようです。

本好きな子どもが集まる想定とのことで、どんどん読んでもらえるようなプラットフォームにしていきたいと言います。現在はiPadからの展開ですが、Android版も想定中とのこと。最後に、本屋がない直島にブクフレを導入した際のドキュメンタリー映像があるということが紹介されていました(下記)

子どもに安心して利用してもらえるプラットフォームとして、出版社とは違う立場での電子書籍サービスの展開。今後の動向に注目です。

※ブクフレのWebサイト(http://www.bkandfr.jp/)と紹介動画です。

パネルディスカッション:第2部登壇者+作家あさのあつこ先生、角川つばさ文庫武内由佳氏、赤堀氏、佐藤氏

<自己紹介>

(あさのあつこ先生)物書きとして、環境が大きく変わることを今日この会場で感じている。物書きとしての立場を持ちながら、今後どうしていくか考えていきたい。*中学受験の問題として、よく作品が取り上げられるそう。

(武内由佳氏)本の送り手、出版社としてやっていくことはあまり変わらないかもしれないが、もっとこういうこともできるのではないか、と刺激をもらっている。

 

(佐藤)Q.今まで読書と言えば紙であったが、環境が大きく変わってきている。作家としては環境の変化は何かあるか?

(あさの)これからだと思う。紙でもデジタルツールでも、書き手としては読者が読みたいものを書くということになると思っている。紙だから、デジタルだから、と表現を変えていると書き手としてブレてしまうと感じている。読書は、紙やデジタルをこえたところに、その体験の本質はあると感じている。だから、基本的には関係ないと感じているが、デジタルによって、読者の間口が大きくなってくれて、これまでの小さな間口からは入れなかった子どもたちが入ってきやすくなるのならば、それは幸せなことではないか。

そこから生じてくる諸問題について、我々大人は対処していかなければいけなくなるだろう、と思う。自分は人口3万人程度の田舎に住んでいるが、地域とか財力とか、そういったものによって読書格差が広がるようなことにはしていきたくない。格差を限りなくゼロに近づくようにしてもらいたいなと感じているちなみに、執筆はリズムが合うのでPCでやっているが、ゲラの作業は紙でないと前に進まないと感じている。なぜ?と問われるとうまく答えられないが、自分としてははっきりと二分されている。

 

(佐藤)Q.ハリーポッターの新聞のように、めくりながら、動画が動くというようなものがあるかも?

(あさの)動画は確かに画面に引き込む要素はあるのかもしれないけれど、本の良さは、自分なりの想像を広げる余地があることだと思う。映像で画一化することに対しての危惧は感じる。

 

(佐藤)Q.出版社として、デジタルへの取り組み姿勢について作家の方に差はあるか?

(武内)「街の本屋を大切にしたいので出さない」という人もいる。出しても良いという人のみ出している状況。

 

(佐藤)Q.今後、電子書籍の流れの中で出版社として作家への対応を変えていくこともあるのか?

(武内)出版社として、電子書籍の説明もしていくことにはなるが、最終的に決めるのは作家だろう。

(佐藤)Q.進研ゼミの3万5000人という数字はライブだけのもの?

(小野)リアルタイムもあるし、アーカイブを見た人も含めて総合計の数字。本当のライブでの視聴者は1万5000人。

 

(佐藤)Q.Udacityで、あるGoogle出身者が全世界に向けて講義した時の視聴者が1万6000人だったので、それくらいの規模で実施していることになる。これはオープンではないが、昨今で言うMOOCsみたいなものではないか。これを広げていく考えか?

(小野)もちろん、数学だけということでなく、今後は英語や他教科も広げていきたい。ライブだけでなく、アーカイブもうまく活用していきたい。

 

(佐藤)Q.LMSの設計も重要だろうが、どのようなことを機能的に考えているか?

(小野)データとして残るものは残るので、個々の履歴をみて、それを分析してどうしていくか、というのはまさに今取り組んでいる所である。かなりのビックデータになるので、どこまでやっていくのかは試行錯誤しながらである。

 

(佐藤)Q.ソーシャルリーディングについて、他の人が今自分が読んでいる本を応援していくれるとか、新たな1対Nができて来ると思うが、今感じているソーシャルリーディングの可能性は?

(高橋)間口が広がるきっかけになることを感じている。本好きな子は、うちに秘めたものが多いと感じるが、それでもすごく近いものを感じると、「どこにいる人か知りたい」というような自然な声をモニターから貰うこともある。

 

(佐藤)Q.リアルな体験で得ているわくわくをどのように学校に入れいれていくか。いつも気になっているのは、外部実験ではよい結果はでてくるのだが、学校にいかに導入するかが課題ではないか? 

(赤堀)コミュニティという概念、これまで、部活やクラスなどでコミュニティを作っている世界だったが、今これがデジタルに広がっている面がある。よいか悪いかはさておき、現象として。それをうまく使っていくことを考えるのだろう。

例えば、ライブの授業はリアルの授業にどう関係してくるのか。対面であろうと、ライブであろうと、結局プレゼンスの高い教師には敵わない、という観念がある。リアルだから良いというより、その人がもっている影響力やプレゼンスが大事ではないか、という研究がある。

我々は映像や電子書籍や紙やいろいろな多様な情報メディアを経験する世界に生きている。表現媒体は多様なもので、それぞれの世界を楽しめるということになるだろう。

PISAの学力シンポジウムによると、これからはCBTになるだろうと言われている。ということは、世界は紙で表現できるテストとコンピュータでのテストそれぞれで出来たテストを受けていくような時代になっている。我々は多くのメディアに囲まれている。だからこそリテラシーを高めていかなければと思う。

2000人ほどのアンケートで、今ほとんどの家庭でゲームが入っており、そのうちの6割がインターネットにつながっているという。心配だとかい事よりも、既に触れているのだという環境。

仕組みを仕掛ける側としては今日のような話になるのだが、学習者側も大きなクリエイティビティを持っていると感じている。ラインやプロフやDSを使って、大人が想像できないような作り方でコミュニティを形成することもある。与え過ぎず、余白の残したシステム提供により、学習者側のクリエイティビティを発揮してもらうことも重要ではないか。

 

 

第3部 これからの子どもに広がる可能性 パネルディスカッション:株式会社ベネッセホールディングス代表取締役社長福島保氏、あさの先生、赤堀氏、渡辺氏

※あさの先生と福島氏は同じ出身で、2000人くらいの村だった。

(渡辺)Q.そういった地方に対しても、学力向上だけでなく、議論やクリエイティビティなど、生きる力を育成するところに、デジタルはどのような影響をあたえるだろうか?

(赤堀)ある地方に視察にいったことがある。いろいろな学生のタイプがいるが、夢がない学生が多い。デジタルなりいろいろな道具を使ってはいるのだが、もっと世界に向かって何かを発信できるようなことができないかと感じる。東京の学生よりも純朴で優秀な学生が多いが、おとなしく聞いているだけ。それではダメ。デジタルでもなんでもよいのだが、夢を持ち、それを発揮できるようなことを進めていけたら、と考えている。

(福島)子どもたちにもっと、偉人伝のようなものや大志があった人の物語を読んでほしいと思う。言語的には英語が浸透するのは間違いないし、コンピュータとの関連分野としては、プログラミングのような領域もありうるのだろうと感じている。

 

(渡辺)Q.プログラミングやブクフレに力を入れていくのか?

(福島)規模はおいておくが、英語の教室や理科の実験教室は満足度も高い。デジタルと実験や地域を組み合わえて何かできたりとか、プログラミングもだが、何かいい提供の仕方があれば挑戦していきたい。

(あさの)今は、偉人伝が子どもたちの頭に浮かびにくい。目の前に見える大人は、頭をさげているような人ばかりがテレビに映ってくる。それらは、「こうなりたくない」と感じさせるものではないか。これでは子どもの学ぶ意欲を削いでしまう。理想と志をもって、「頑張って取り組んでいる大人だっているんだよ」ということを子どもたちに伝えていきたい。

 

(渡辺)Q.偉人伝のようなものと、デジタルのようなものは、独立のものなのか? 

(あさの)書き手としては伝えたいことがあって書くのであって、デジタルか紙かは関係ない。

 

(渡辺)Q.共有やフェイスブックでのシェアのような仕組みもあるが、そういった観点についてはどうか?

(あさの)いまの人は、つながらないことを恐れるという、「つながらなければいけない」という観念に支配されているような気がする。つながらなくてはいけないというよりも、つながりたい人と繋がれる。例えば、物語を書くことで、それを好きな人から反応がくる。それは素晴らしいこと。小さな街で、読書会のようなことをやろうと思っても、それは到底ムリ。例えば、それをデジタルが入ることでできるようになる。それが大好きな本というものを中心として広がっていく。デジタルによって学習の仕方が変わるということだけでなく、コンテンツの楽しみ方にも変化があるのではないか。本を読んだコミュニティというのは新しいものではないが、デジタルがあることによって、そのハードルが下がり、子どもが自分の可能性や思いに気づくこともあるのではないか。

 

(渡辺)Q.ベネッセとして、この流れをどう活用していくか?

(福島)若い人に考えてもらいたいと思うが、通信教育では、1対1が限界だったが、今度はグループ化していくとかコーディネイトしていくようなことやディスカッションをしていくようなことも可能性があるのではないか。人が読んだチェックを見られたり、本を読むことによってその人がどうインスピレーションをうけたのか、ということを知れたり。

(赤堀)秋田県の八峰町という所がある。全国一位の学力ということで視察にいった。ここでは、地域の一番よい土地に学校があり、地域の皆が大事にしているようだった。また、地域が先生を大切にしていることもわかった。コミュニティが学力をあげていると感じた。外部環境的には、財政も秋田県の平均よりも悪いにもかかわらずだ。デジタルというテクノロジーはあくまでツールなわけだから、デジタルだからどうこうというのではない部分もあるだろう。

 

いかがでしたでしょうか。

3回にわたり、ベネッセコーポレーションが開催した「新しい学びのシンポジウム」の模様をお伝えしました。Edtechの分野ではベンチャー企業が注目されることが多いようにも感じますが、ベネッセのような大企業も本腰を入れていることがシンポジウムからもよく分かりました。今後この分野の発展が、学習者にとってよりよい学習環境につながっていくことを期待しています。

閉会の挨拶では、今後の「新しい学びのシンポジウム」で、ゲーム会社の方を招いたり大人の学びなどをテーマにも開催していきたいというお話がありました。第2回以降にも注目していきたいと思います。記事制作中に第2回も告知が始まりました。

※【イベント】ベネッセが主催の『EdTech新しい学びのシンポジウム』第二回開催決定!

余談ですが、「今後Facebookページも立ち上げていきたい」「会場でのアンケートもできる限りそこで触れていきたい」と話されており、セミナーの開催の仕方や位置付けにも変化があるように感じました

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ABOUTこの記事をかいた人

EdTech(教育×テクノロジー)をテーマにした「EdTech Media」、教育業界に特化した求人サービス「Education Career」を運営する、株式会社ファンオブライフ代表取締役。 EdTechのムーブメントを、情報と人材の面から支援している。