【レポート】ベネッセが開催!『新しい学びのシンポジウム第1回』vol.2

2013年12月16日、ベネッセコーポレーションは、東京目黒雅叙園で「新しい学びのシンポジウム第一回」を開催しました。

vol.1では、ベネッセコーポレーションの森安部長のご挨拶と中垣氏によるレポートの様子をお伝えしました。

※【レポート】ベネッセが開催!『EdTech 新しい学びのシンポジウム 第1回』vol.1

vol.2では以下の模様をレポートします。

・「これからの教材作りとEdTech ベンチャーの取り組み」として、Quipper,Ltd代表 渡辺雅之氏

・「進研ゼミタブレット実験版とenchantMOONにおけるハードウェア、手書きソフトウェアの取り組みのご紹介」

ユビキタスエンターテインメント秋葉原リサーチセンター 辻秀美氏

・「タブレットの学習効果について」

白鴎大学教育学部長・教授, 東京工業大学名誉教授,(財) コンピュータ教育推進センター理事長, NPO教育テスト研究センター理事 赤堀侃司氏

・第1部登壇者によるパネルディスカッション

 

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「これからの教材作りとEdTech ベンチャーの取り組み」Quipper,Ltd代表 渡辺雅之氏

Quipper渡辺氏

Quipperは、今回のベネッセの大規模実証実験にシステムインフラを提供する形で参加しています。

2010年にロンドンで設立した同社は、知のプラットフォームづくりをミッションに掲げ、コンテンツ自体ではなく、先生や学び手それぞれにQuipper Schoolやシステムを提供しています。詳細はこちらのQuipper社の紹介ページをご覧ください。 

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Quipperでは、もともと「最も良いプラットフォームは1つだ」と考えていたそうですが、取り組みを進めていくうちに、文化差や学ぶ対象ジャンル、年齢によっても、UIUX、デザイン、ゲーム性、配色などが大きく変わることを痛感していると言います。そして、同社ではシステムライブラリーを組合せてバリエーションをつけられるようにしているとのこと。

デジタル学習の分野では、まだ誰も「ベスト」と呼べるものは見つかっていないが、Quipperには比較的コンポーネントが揃っていたことから、今回の実験に参加できたのだろうと言います。

実験参加にあたり、観念的になりがちな「どういうサービスが良いか」をデータで示したかったそう。

多重スプリットテストを統計的に意味のある母集団に使ってもらいながら検証し、「良いサービスは人によって違う」ということから、多面的なKPIを設定したといいます。

個別に対応しているときりがなくなってしまいますが、教育分野では高品質でぴったりのものでないと、なかなか使ってもらえない。それは通信環境のインフラの差もあれば、利用タイミング(e.g.テスト前、移動中など)、コンテンツタイプの差(e.g.リスニングトレーニングなのか、数学の証明問題なのか)、ユーザ属性の差(e.g.リテラシーなど)があると言います。

そして、本当にぴったりのものでないと、すぐに使われなくなってしまうことがデータ的にわかってしまうというのは、提供者としては厳しい面もありそうです。

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コンテンツ的に高品質なものであることは前提ですが、プラットフォーム側のサービスとして担保できるものとを組合せてより学習者にフィットするものを実現していく必要があるといいます。

世界中でベストなやり方が模索されていますが、今回の実証実験の体制のように、『ベンチャーならではのスピード感と、エスタブリッシュの資産がどちらも必要だ』と渡辺氏は言います。

ベンチャーだけでは、そもそも十分な母集団を確保できずに実験そのものが出来ないし、一方でベンチャーのように臨機応変にスピード感を持って作り変えていくことも要求されるからです。机上で考え過ぎないことが重要だと渡辺氏は締めくくりました。

 

ユビキタスエンターテインメント秋葉原リサーチセンター 辻 秀美氏

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続いては、ユビキタスエンターテインメント秋葉原リサーチセンター辻氏による、enchant MOONの実機デモを交えた講演。

今回の実証実験では、進研ゼミ実験版の手書き部分の開発を担当したそうです。 

同社のenchantMOONは、”No UI”の端末開発です。手書きでどんどん記入していけて、書き込んだ文字を丸で囲むことで文字認識をし、そのままWeb検索やカメラ起動ができるといった機能もあり、「こうやったらどうなるんだろう」というワクワク感を大事にしていると言います。コンセプトは、未来を描く”紙の進化形”、「手書きの自由さ」と「デジタルデータやWebの利便性」を兼ね備えた“魔法の紙”を目指しているといいます。

手書き、No UI、ハイパーリンク、プログラミングが特徴とのこと。実際に見るとイメージがわかりやすいので、是非下記動画をご覧ください。


※その他の動画も含めて詳細は下記のenchant MOONのプロダクトサイトをご覧ください。

現在タブレット端末ではiPadが主流ですが、こういった新しいコンセプトのデバイスが教育分野にはフィットする、ということもあるかもしれません。手書きは答えだけを書かせるのではなく、プロセスもかける点で優れており、文字の筆圧センサーもあるので、漢字のとめ、はらいなども表現できると言います。

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プロダクトサイドのイノベーションも要注目ですね。

 

「タブレットの学習効果について」 白鴎大学教育学部長・教授 東京工業大学名誉教授、(財) コンピュータ教育推進センター理事長、 NPO教育テスト研究センター理事 赤堀侃司氏 

赤堀氏は、タブレットと紙では学習効果がどう違うのか、教材学習(紙)とPC、タブレットによる学習の違いの検証結果を報告しました。「タブレットでは紙に勝てない」という短絡的な結論ではなく、タブレットは紙やPCと異なる特性をもつメディアであることがわかったと言います。

学びのシンポジウム 

詳細データは割愛させていただきますが、大学生を対象にした調査で、紙はもっとも「飽きやすい」ということがわかったといいます。きちんと集中して継続できる優等生にとっては良いメディアです。学習する上で、もっとも「疲れやすい」のはPCであったとのこと。そして、もっとも「もう一度やってみたい」と思えたのはタブレットだったとのことです。

学びのシンポジウム2

この結果がまず得られたことにより、「タブレットが学習に優れているのではないか」という予測が見えてきたと赤堀氏は言います。

学びのシンポジウム3

また、中学生には順序効果も加味して、紙、iPad、PCによる学習の検証を行ったところ、ほぼ同一の結果が得られたそうです。タブレットは手書きできるインターフェイスで、大切な部分だと思ったら手で書く、アンダーラインをつけるという動作を直感的に実現することができる。与えられた範囲をいかに理解するかという点で、書くというのは大事で、紙も有用な道具として考えなければいけないといいます。勉強した実感をもてる、エネルギーを発揮したという実感が紙による学習にはあるそうです

タブレットは写真や映像系に優れていることがわかったと言います

これは当たり前のようですが、これは学習を設計する上で重要で、例えば「一日のできごとを文章にしてみましょう」といっても、サラサラと書ける人はそうはいませんが、写真撮影や録画を通した活動をしていると良い文章をかけたりする例があるそうです。

また、もう一度学習したいという動機性も同様にあったということで、学習結果は最終的に同じでも、プロセスでかなり有用だと言えるとのこと。 

「紙はアノテーション(注釈などのメモ)が許されるところがPCとは違うが、タブレットはその要素も持っている。平面を見ると人は何か書きたくなるもの。鉛筆は書きたくなる道具だが、タブレットはそのまま触ってかけてしまう。PCは入力にキーボードやマウスも使うので、そこにも差があるのではないか」と赤堀氏はいいます。

学習中、「これは重要だ」と感じたら人は線をひいたり囲ったりといった行動をおこすものでそれがデジタルで許されているのがタブレットというものの道具性なのではないか、タブレットと紙を併用していくのが肝要ではないか、と言います。

学びのシンポジウム4

 

パネルディスカッション:第一部登壇者 モデレータ:デジタルハリウッド大学院 佐藤氏

(佐藤氏)

デジタルハリウッド大学院で、EffectiveLearningというゼミと授業を担当している。MOOCsやカーンなど、イノベーションを起こすテクノロジーの変化として語られることが多くなっている。教育にテクノロジーでイノベーションを起こそうという人たちがいて、学校の周辺でイノベーションを起こしながら、それを学校教育に普及させようとしている。社会背景的には、スマホの世帯普及率が50%をタブレットは15%で10代20代の利用率が急激に伸びている。

 (佐藤氏)

Q.子どもからは、タブレットを使うワクワク感があったようだが、親からはネガティブな声もあった。子どもと親のギャップが特に小学生向けには大事だと思うが、このギャップについてどう考えているか?

(中垣氏)

子どもは初めてのもので、見れば触るし、触って反応があれば「素直に楽しい」という人が多い。大人は、勉強は紙でやるものとか、本を読むもの、というような固定観念があるように感じている。目が悪くなるのではないかという心配の声があったり、子どもをみていて「うちの子どもにはこっちのほうが良い」という選択もある。うちの子にこれを渡すと勉強にならないという人もいるし、逆にどこにでも持って行って学習している面を評価している親もいる。いかに子どもが楽しみながら、変に遊びにいかずに、学習効果を担保していけるか。確かにきっちりと紙に書いて、本を読みながらやらなければいけないこともあると思う。

 

(佐藤氏)

Q.ゲーミフィケーションと学習効果について、コインを与えるようなものとモチベーションUPについて、それは学習効果に繋げられるきっかけになりそうか。それが親の懸念につながっているのではないか。

(渡辺氏)

使っている時間のなかで、どれだけ学習にしているかなどは測定していた。ゲーム要素を入れすぎた時に結果が落ちるかどうか、といったこともKPIを入れながら検証していた。結果としては、悪影響は、ほぼ無いように見えた。本当に学習効果があがるのか、続けることができるのか、というのが重要なところだが、学習とゲームと両方できるようなことが重要ではないか。親の要望で機能を外す、ということもあるかもしれないが、それで子どもが継続できるか。継続の仕組み自体はマル秘だが、電源をつけるのが楽しい、義務感よりも楽しい、持って行きやすいなど、「机にむかってさあやるぞ!」でなくても、生活上どこでも学習を進めやすいものが良いのではないか。

(佐藤氏)

Q.ベンチャーと大企業のコラボは、スピード面など難しいところはあるのではないかと感じているが、うまく力を融合してやっていけたのか。 

(渡辺氏)

1000人単位で数ヶ月単位でやるというのは、ベンチャーであるQuipperとしては体力的に難しい。出し分けをしながら検証というのもやりたかったが、これまではできなかった。それをやらせてもらえたので大変有意義だった。一緒にやるストレスはなかった。現場にも権限がきちんとあったし、ディスカッションもお互いにない視点を補完しなができてよかった。教育的観点からお叱りをもらったところもあったが(笑)、よいディスカッションだった。 

(佐藤氏)

Q.自分には子どもがいるが、まだまだ鉛筆が必須。鉛筆でないと とめ、はね、はらいができない、シャーペンは高価である、分解してしまって集中力を欠く、といった話が未だにある。タブレットのような端末を教育の場に本当に広げていくためにはどうしたら良いのか、ヒントはあるか?

(辻氏)

紙の便利さとタブレットの良さを、合わせてしまおう、というのが自社の発想。触っていて楽しいとか、キラキラ、びっくり、ワクワク、それを見せてあげたら魅力は高まるし、それでいても、きちんと学習にもよりそってやれるところを見せていくところをやっていければと思う。

(佐藤氏)

Q.学校現場や教育工学の専門の立場からみて、テクノロジーのスピードに仕組みが追いついていない面はあるのではないか?

(赤堀氏)

いろいろ試行錯誤していると思うが、親から見れば、本当に勉強しているのかな、とかそういう懸念を感じるのもわかる。少し話は変わるが、岡山の小学校では、英語の授業でチームをわけて単語を答え、はがすと点数が書いてあり、それを競うような授業をしていた。すごく単純なんだけど、面白いし盛り上がる。日本ではこれまで、板書したものを単に読ませることを何度も何度もひたすらやらせるが、彼ら(ネイティブ教師)は、点数を見せて、面白くやらせていた。

優秀な子にとっては、そんなことをしなくても良いかもしれないが、どんな子どもでも学び、楽しむ、テクノロジーを使う権利もあるのではないか。使いたい人がいるのだから。テクノロジーを入り口とした子どもがいればそれはそれで良いと思う。

(佐藤氏)

楽しく学んでなにが悪い、ということだろう。楽しい、ワクワク、カッコ良い、が印象に残った。どんなものがきっかけでも良いので、まずはそこからスタートし、継続していけると、学習効果も高まるのではないか。

 

近日中にvol3も更新予定

タブレットの有用性については効果検証もある程度進む中で、実際に広げていくには、現場や学習環境を用意する親世代の理解も、広めていく必要性を感じます。
続いてvol.3では下記の第2部以降の内容もご紹介します。 

・第2部:テクノロジーで広がる子どもの体験

・『進研ゼミ中学講座』中学1年生の16万人が使う<Challenge Tablet>:自宅で塾体験(ライブ授業) ベネッセ 中学生事業部部長 小野祐輝氏

・新サービス紹介:子どもと電子書籍 読書SNS体験 ベネッセ デジタル戦略推進部 デジタルビジネス開発セクションセクションリーダー 高橋淳氏

・第2部登壇者と出版社様、作家あさのあつこ氏、赤堀侃司氏によるパネルディスカッション

・第3部:これからの子供に広がる可能性
ベネッセホールディングス 代表取締役社長 福島 保氏、あさのあつこ氏、赤堀侃司氏
モデレータ Quipper,Ltd代表 渡辺雅之氏によるパネルディスカッション

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    EdTech(教育×テクノロジー)をテーマにした「EdTech Media」、教育業界に特化した求人サービス「Education Career」を運営する、株式会社ファンオブライフ代表取締役。 EdTechのムーブメントを、情報と人材の面から支援している。