【レポート】ベネッセが開催!『EdTech 新しい学びのシンポジウム 第1回』vol.1

2013年12月16日ベネッセコーポレーションは、東京目黒雅叙園で「新しい学びのシンポジウム第一回」を開催しました。2時間の間に、ご挨拶を含めて10のセッションが提供される盛りだくさんの内容です。今回から複数回にわたり、シンポジウムの様子をご紹介します。 

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まずは、当日全体の流れです。

開会のご挨拶

・ベネッセ デジタル戦略推進部部長 森安康雄氏

第1部:タブレットと新しい学び

・小6大規模実証実験<「進研ゼミ」タブレット実験版>報告

 タブレット学習の可能性の広がり ベネッセ教育総合研究所 グローバル教育研究室 主任研究員 中垣眞紀氏

・これからの教材作りとEdTech ベンチャーの取り組み

 Quipper,Ltd代表 渡辺雅之氏

・タブレットの学習効果について

 白鴎大学教育学部長・教授, 東京工業大学名誉教授,(財) コンピュータ教育推進センター理事長, NPO教育テスト研究センター理事

 赤堀侃司氏

・第1部登壇者によるパネルディスカッション

 モデレーター:デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏

 

第2部:テクノロジーで広がる子どもの体験

・『進研ゼミ中学講座』中学1年生の16万人が使う<Challenge Tablet>:自宅で塾体験(ライブ授業)

 ベネッセ 中学生事業部部長 小野祐輝氏

・新サービス紹介:子どもと電子書籍 読書SNS体験

 ベネッセ デジタル戦略推進部 デジタルビジネス開発セクションセクションリーダー 高橋淳氏

・【特別映像紹介】

「作家あさのあつこ“人生に物語を”」/「本屋さんのない島の子どもと電子書籍体験」

・第2部登壇者と出版社様、作家あさのあつこ氏、赤堀侃司氏によるパネルディスカッション

 モデレーター:デジタルハリウッド大学大学院 教授 佐藤昌宏氏

 

・第3部これからの子供に広がる可能性

ベネッセホールディングス 代表取締役社長 福島 保氏、あさのあつこ氏、赤堀侃司氏
モデレータ Quipper,Ltd代表 渡辺雅之氏によるパネルディスカッション
 
閉会のご挨拶

 ベネッセ デジタル戦略推進部 デジタルビジネス開発セクションセクションリーダー 高橋淳氏 

全体会終了後、名刺交換の時間も用意されていました。

今回の記事ではvol.1として、ベネッセコーポレーションデジタル戦略推進部部長 森安康雄氏のご挨拶とベネッセ教育総合研究所 グローバル教育研究室 主任研究員 中垣眞紀氏による「小6大規模実証実験<「進研ゼミ」タブレット実験版>報告 タブレット学習の可能性の広がり」についてレポートします。

 

開会のご挨拶:ベネッセ デジタル戦略推進部部長 森安康雄氏

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デジタルメディア推進部ということが、いまどのようなことをしているかということをご紹介したい” と開会の挨拶が始まりました。

デジタルメディア推進部は、ベネッセのいわゆるEdtechに関する取り組みを管轄している部署とのこと。

最近の取り組みとしては、「Edtech Lab(β)」 を渋谷に開設し、スタートアップ企業と情報交換をするなど、活動を始めているようです。ちなみに、Edtech Lab(β)のFacebookページなどで告知される「森安デー」 は、森安部長がEdtech Labで来ていて、気軽に相談をすることができる、スペシャルな日のことです。教育系スタートアップは要注目ですね

”Edtech、新しい学びをブーストしていきたい”  と森安氏。

「そのEdtechの学びシンポジウム。第一回ということで、来年1月から順次、開催していく予定」だと話していました。

取り上げるテーマとしては、クリエイティブラーニングやオープンエデュケーション、何かと話題のMOOCなどを計画中だということです。

ベネッセ単体でEdTechの市場を拡大できると思っていない。コラボレーションの中で新しい動きをしていきたい。そして、それが21世紀のこどもの学びになるのではないかと考えている」

「今後、EdTechによって、新しい学び体験を提供していく。単に新サービスを提供するということでなく、21世紀の学びを提供しているということ、そしてその学習効果も追求していきたい」

「EdTech+αについて、ベネッセが何を考え、どうしていこうと考えているのかをご紹介していきたい」

今後も継続されるという新しい学びのシンポジウム。楽しみです。

 

小6大規模実証実験<「進研ゼミ」タブレット実験版>報告 タブレット学習の可能性の広がり」 ベネッセ教育総合研究所 グローバル教育研究室 主任研究員 中垣眞紀氏 

「新しい学びのシンポジウム第一回」のプレゼントップバッターは現在ベネッセにて行われている大規模実証実験についての報告でした。実験はまだ継続中で、途中段階の結果ということですが、示唆に富む結果が得られているようです。

概要としては、2013年10月から12月までの間に、小学生向けにタブレット端末を提供し、その効果について、多重A/Bテストやアンケートなどで効果測定しているもの。

検証したかったこととして、下記3点をあげています。

 ① タブレット学習そのもの

 ② ご褒美としてのコインの効用

 ③ 一緒に学習する友だちの存在と関わり  

具体的には、進研ゼミ受講者の小学校6年生790人に対して、希望者を募り、タブレットの試作品をつかった学習モニターを実施したとのこと。国語は縦書きの問題があったため、今回は算数、理科、社会についてだということです。

ベネッセシンポジウム

従来の紙テキスト「チャレンジ」の読む部分(導入や解説部分)を、次々にめくっていく形式で作成されているとのこと。機能としては、「また見る」といった、しおりのような機能と、手書き機能で考えながら進められるというもので、問題部分は、各10題ほどあり、その後、解説と、流れ自体はベーシックなものです。後に触れますが、自動採点ができたり、間違えた問題をおさらいボックスへいれておき、後で復習ができるというのは、デジタルだから提供できる部分として好評だったとのこと。

今回の検証範囲としては、「やる気にしていく仕組み」部分についてであり、学習部分は同じ設計になっているそうです。その理由として、「1人では学びが継続しにくい」 ことが問題意識としてあるよう。

主な比較項目は下記の3点です。

 ・アバターがあるかないか(ないものは、非常にシンプルなもの)

 ・コイン&コインストア

  *連続正解するとコインがたまっていき、コインがたまるとアバターや画面の背景画像と交換できる。

 ・友達のタイムライン表示と「ガンバ」(いいねボタンのようなもの)

  *友達が学習しているところが表示される。友達からもらったガンバの数も表示。

 上記について、学習画面の背景画像のありなしの効果なども検証しているそうです

 

<結果>

子どものログイン率は、ゲーム系×ソーシャル機能をつけたものが、ベーシックでシンプルなインターフェイスよりも、持続性がある傾向が見られたとのこと。

ベネッセ_シンポジウム

まだ1ヶ月だけの実験結果であり、これだけで断言できない様子ではありましたが、ログイン率、アクセス率ともに、シンプルでベーシックなものは、低下が速い傾向が見られたようです。

このことから、ゲームやソーシャル機能をつけることで、一定のアクセス向上効果があると言えそうです。ただ、講演では触れられませんでしたが、最終的なアクセス率は、どの場合も60%程度に収束しているように見えます。

また、演習問題の回答数についても、ゲーム機能を搭載した場合は、搭載しない場合に比べて、問題をより多く解答した学習者が多い傾向が見られたということで、「学習を促進した感覚がある」とのことです。

ベネッセ_シンポジウム

機能面の評価としては、タブレットならではの、自動採点やおさらいボックス、手書きに高評価が集まったようです。

 「すぐに正誤がでて、スピード感をもってサクサク進めることができるというのは、ベーシックだが重要な価値であり、デバイスとしてタブレットを触ることが「面白く」、家で暇があればさわっている子どももいた」とのこと 

保護者からは、「答え合わせが案外面倒だったりするようで、子どもが適当にやってしまうくらいであれば、(正誤を自動でやった上で)間違った問題を繰り返しできる方がよい」

というポジティブな声もある一方で、

「答え合わせも振り返りになるので紙での学習もやらせたい」「手書き学習が減る」

といった声も聞かれたようです。

 

コインやガンバ機能(いいね のような機能)については、アンケートで「良かった」という率は高くはなかったとしながらも、 

「(コインの)交換率は7割程度ある。ただ、漫画を買うためにコインを使わずに待っている人もいる。なんらか楽しんでいる様子は見えてくるが、楽しみ方は様々なようだ 」

「コインの効用としては、見ていて可愛い、画像のこれが好き、という感情を学習の分野に持ち込めるのが良い。」

自分の好みを取り入れることで、学習環境を自分で整えていくという感覚を持てる」

「コイン自体を貯めることが楽しく、それが学習した証になることで学びのやる気になっている例もある

「親からは、マンガやゲームがコインで交換できることについては、やや否定的な声もある」

これからも効果的な「ご褒美」を仕組みとして考えていくのでしょう。

ガンバ機能については

「ガンバを全然押さない子どももいた。友達が頑張っているのでやらなければ、という効果はあるが、ガンバは押さない、押したくないという感情もあるのかもしれない、また保護者からは、励まし合いはリアルにやって欲しいという声もあった」と言います。

データはまだまだ検証の余地があるとのことですが、賛否両論が出るのはある意味健全であり、今後の分析・展開が期待されます。

最後にまとめとして、 「親の反応も「うちの子は紙が良い」「うちの子はデジタルで学んでいける」という声もあるなど、タブレットか紙という二項対立ではなく、子供の学習状況や性格によるところが大きい」 「やる気を外からサポートすることはある程度は可能」 と締めくくっています。

 

後の記事でも触れますが、進研ゼミはとても大きな学習者基盤を持っているため、社会的な信用からも統計的に有意差を検証できる母数で実験することが可能で、アンケートだけでなく、ビックデータ的な観点からも分析・PDCAを回しやすいポジションにあるように思います。

日本の教育界の巨人がどのようにEdtechを取り入れていくのか。大変楽しみです。残りの講演についても近日中にご紹介していきます。

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    EdTech(教育×テクノロジー)をテーマにした「EdTech Media」、教育業界に特化した求人サービス「Education Career」を運営する、株式会社ファンオブライフ代表取締役。 EdTechのムーブメントを、情報と人材の面から支援している。