学校のクラス向けプライベートSNS「ednity(エドニティ)」を提供する佐藤見竜氏に聞く、起業の背景と目指す世界

ednityは学校のクラス向けのプライベートなソーシャルネットワークサービスです。デジタルガレージやカカクコム、ネットプライスが手がけるシードアクセラレータープログラムOpen Network Labの第7期に参加したスタートアップで、非常に注目度が高いサービスです。そのEdnityのCEO佐藤見竜氏に、起業の背景から目指すサービスについてお話を伺ってきました。

※参考 Open Network Lab Fall 2013 第7期のDemoDayの記事「OnlabデモデーFall 2013 — 第7期はEdTech、クラウドソーシング、学内SNSなどを採択」

起業のキッカケは、アメリカの革新的なチャータースクール「Rocketship Education」に出会ったこと

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※写真は、株式会社Ednity代表取締役佐藤見竜氏

Q:起業の背景からお聞きします。起業するきっかけは何だったのでしょうか?

A:VIA(Volunteer in Asia)というNPOのExploring Social Innovationという社会課題をどのように解決していくかということを実践しながら学ぶプログラムに参加したことがキッカケです。プログラム期間中、サンフランシスコやパロアルトを中心としたシリコンバレーで、現地の起業家、投資家、スタンフォード大学のd.school、NPO、IT企業やIDEOなど、数多くの人々を訪問しました。その訪問の中での学びを通して、自らが設定した社会課題の解決に取り組みます。Social Entrepreneurship、Leadership、Design Thinkingなどの力を身に付けたChange Makerを育成することを目的としたプログラムです。

そのプログラムの中で、Rocketship Educationというチャータースクールを訪問する機会があり、非常に強いインスピレーションを受けました。Rocketship Educationに通う子供は、平均的な同学年の子供たちよりも学力に遅れを持つメキシコ系移民の子供が中心です。そこではFace-to-Faceの対面指導とコンピュータを用いたOnline学習を巧みに組み合わせたBlended Learningという学習モデルを実践しています。

クラスの生徒数十人を教師一人が一斉に指導する方法だけでは、生徒一人一人が自分のペースに合わせて学習することができません。Rocketship Educationではコンピュータや学習データなど様々な方法を上手に組み合わせることでそれを可能にしていました。さらに、学校が保護者の方を事務員として雇用することで、学校に保護者を巻き込むことを可能にし、学校と家庭の距離が非常に近いように見て取れました。そこでは先生・生徒・保護者が一体となり学習コミュニティを築いており、これこそ理想的な学習環境であると強く思いました。

日本では、いじめの問題が話題になり学校や先生が批判の対象となってしまったり、あるいはモンスターペアレントと呼ばれてしまう保護者の方が存在してしまっています。学校と家庭の隔たりが大きいのではないのでしょうか。学校と家庭のコミュニケーション不足による信頼関係の欠如が原因なのではと考えます。先生と保護者、また生徒同士のコラボレーションが起こり、協同的な学習環境を築くことで、人々の可能性を最大限にしたい、そんな想いから起業しました。

Rocketship Educationに関しては、佐藤さんのブログHackInsightに詳細がありますので興味の有る方はこちらもご覧下さい。

クラス向けのプライベートSNSで、グループ学習を可能に。コミュニティへの貢献を評価の仕組みに取り入れたい

Ednity

Q:続いてサービスの詳細を教えてください。ednityはどういったサービスですか?

A:学校のクラス向けのプライベートSNSです。先生、生徒、保護者がつながり、24時間安全な環境で学習可能なプラットフォームです。小テストや宿題に利用可能なクイズ、成績管理、アンケートの投稿、Q&Aフォーラムでは生徒同士のディスカッションなどが出来ます。Q&Aフォーラムでは、リアルタイムに共有される手書きのホワイトボードがあるので、テキストだけでは表現が難しい数式やグラフなどの共有も可能になっています。

Q:ednityによって提供したい価値はどういったものでしょうか?

A:National Training Laboratoriesが提唱する「ラーニング・ピラミッド」によると、記憶に残る学習方法は「人に教える」、「自ら体験する」、「グループディスカッションをする」ことです。このような学習を可能にするのがチームによる学習で、ednityをコラボレーションを容易にする場にしたいと考えています。例えば、生徒がわからない問題を質問し、他のわかる生徒が自然とその問題を教える。そのような体験が学習プロセスの中に数多く組み込まれるようにしていきたいです。

また、今提供されているサービスの多くは、既存の受験制度や評価システムを前提としたサービスになっているのではないでしょうか。

私たちはそういった評価システムなども変えていきたいと考えています。例えばですが、ednity内での行動、すべてのログを数値化して、積極的な質問や、誰かに勉強を教えるなどのクラスへの貢献度も測れるようにしたいです。学校生活はペーパーテストの結果がすべてではありません。生徒自身のどんな些細な行動もクラス運営に貢献しているのだと実感できるようにしたいです。単純な成績だけによる評価方法に終止符を打ち、新たな総合的な評価方法を創ることも可能ではないかと考えています。

ラーニングピラミッド

自分たちはあくまで黒子。 個人の可能性を引き出せるサービスへ

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※写真はインタビューを行った、Open Network Labが運営するOpen Network Space

Q:ユーザーの拡大は、簡単ではなさそうな印象を受けます。今後、ednityをどのように拡大していこうと考えていますか?

A:先生の中には、非常に志が高く、ICT活用も含めて積極的に行動を起こしている方々がいらっしゃいます。そういった方々と信頼関係を築き、徐々にサービスを広げていきたいと考えています。一斉に拡大するというよりは、初期に導入して下さっている先生・生徒・保護者の方々と一緒にサービスを磨き上げて、徐々に導入する学校を増やしていきます。edmodoも急成長する前に、地道にユーザー数を積み上げている期間があるので、焦らずそういった方々とサービスを磨いて広げていきます。

Q:保護者の存在も重要になるサービスだと思いますが、保護者の反応や見立てはいかがですか?

A:ednityにとって保護者の存在は極めて重要だと考えています。保護者と上手く恊働できれば先生の負担を軽減することもできますし、家庭内で適切なタイミングで子ども言葉掛けもできるようになります。保護者をいかに巻き込むかが、サービス拡大の鍵になると考えています。ヒアリングの中である保護者の方が、「学校でのICT活用や新たな学習サービスなどが注目を集めているが、教育において重要な役割を担う保護者へはほとんど目が向けられていない。」と語っていたのが印象的でした。現状あるサービスの中で保護者に焦点が当てられているサービスはあまりないのではないでしょうか。保護者の方々の支持を得ることができればサービスの成長へ大きくつながると考えています。

 

Q:ednityによって今後実現したい世界観のようなものはありますか?

A:電気、水道、ガスのように、あるのが当たり前だがなくてはならない存在、学校生活におけるインフラのような存在になりたいと考えています。私たちが担うのはあくまで黒子の役割です。先生・生徒・保護者の三者をエンパワーし、恊働的な学習コミュニティを築いていくことに貢献していきたいです。

Educationの語源はラテン語のeducatio という言葉で、子供の資質を引き出すという意味だという説があります。「教育」というとこちらから何か一方的に伝えるというイメージになりがちですが、ednityで実現したいことは、この説でとなえられているEducationにより近く、個人の資質を引き出せるサービスにしていきたいと考えています。

ソフトバンクも出資、200万以上のユーザーに利用される学校向けSNS「Classting」とは

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増進会出版社、Edmodoに出資し業務提携。学校向けSNS/学習プラットフォームの提供を2016年2月に開始予定

2015.09.07

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    EdTech(教育×テクノロジー)をテーマにした「EdTech Media」、教育業界に特化した求人サービス「Education Career」を運営する、株式会社ファンオブライフ代表取締役。 EdTechのムーブメントを、情報と人材の面から支援している。