破壊的イノベーションは教育分野でも起きるのか?「教育×破壊的イノベーション」

教育業界のイノベーションや変革に興味のある人には必読の本。2008年に書かれたとは思えないほど内容は色あせず、今も大いに参考になる示唆が含まれた、名著。

著者のクレイトン・クリステンセン教授は、著書「イノベーションのジレンマ」において、 業界をリードするような優良企業が行う合理的で正しい経営判断が、破壊的技術が作り出す新しい成長市場への参入機会を失わせるという理論(イノベーションのジレンマ)を説いた。なぜ優良とされている企業・サービスが、新規参入者にとって変わられてしまうのか。またそれを未然に防げなかったのかを、極めて説得力の高い形で説明している。本書、教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革するは、それを教育業界に当てはめた本だ。

教育領域で破壊的イノベーションは起きるのか?イノベーションのジレンマを教育業界に当てはめると?

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今後の教育サービス、教育業界を考えるにあたって示唆に富む内容が非常に多い。近年でもよく言われるようになった教育の個別化(アダプティブラーニング)についても多く触れている。なぜ公教育の分野でイノベーションが進まないのか、といった内容をわかりやすく説明してくれている。

アメリカの教育制度を前提としているため、日本では一概に当てはまらない部分もあるが、2008年に出版されたとは思えない内容になっている。

印象に残った文をいくつか紹介

教師は一人ひとりの生徒の全身を助ける、プロの学習コーチ兼学習内容設計者として重要な役割を果たすことができる。教師は壇上にいる賢人ではなく、いつも傍にいる導き手になれるのだ

教師の役割はティーチングからコーチングに移行するというようなことが多く言われますが、本書も同様のことを述べています。

生徒は一人ひとり学び方が違う。(中略)学校を生徒が自発的動機づけを持てるような場にするための重要な一歩は、一人ひとりの子どもが最も学びやすい方法に合わせて教育を個別化することだ

アダプティブラーニングの考え方ですね。この本の大きなテーマの一つとして、生徒は一人ひとり学び方が違うのになぜ教え方は画一的なのか?というものがあります。

生徒中心の学習に完全に移行するには、幼稚園から12年生(高校三年生)までの公教育制度の外側でこうした技術の多くを育成する必要がある。(中略)そうすることで、やがてまったく新しい教育の「商業システム」が形成されるだろう。

イノベーションのジレンマでも、破壊的イノベーションは現在は消費の存在しない状況「無消費」にぶつけることから生まれてくると述べているが、教育分野でも同様であると主張している。現在、存在していないような状況に個別化された教育システムを導入することで、生徒中心の学習に移行していけるとしている。その根拠、未来予想図も本書では述べられている。

本書の解説

教育の手法改良として、「全ての生徒に対して一つの教授方式を用いる」ことを前提にした「持続的イノベーション」と、「一人ひとりの生徒が異なる学び方をする」ことを前提にする「破壊的イノベーション」がある。

後者(教育の個別化)を前提とした製品・サービスとしてコンピュータを利用した教育方式があり、最初のうちは、既存の教育ニーズを満たすことができない。

コンピュータを利用した教育方式が、その力を発揮するためには、それを「一人ひとり異なる進度と異なるプロセスで学ぶ」という「無消費」への対応として、まず活用する必要がある

上記は解説で本書のメッセージを要約しているもの。解説の内容も素晴らしく時間のない方は、解説だけでも読んでみてほしい。

一人一人の生徒が異なる学び方を前提にするというのは、昨今非常に注目されているアダプティブラーニングの考え方そのままだ。

Edtechが語られる際に、必ずと言っていいほどあがる「教育の個別化」。それはなぜ既存の教育関連の組織ではおこりづらいのか。コンピュータ(テクノロジー)を武器にした新規参入者がどこから手をつけるべきかを書いている。またクリステンセン教授は、本書の中で2015年にはコンピュータを通じた教育が大きなシェアを持つようになると明確に断言している。※この予測に関しては的中しているとは言い難いかもしれないが大きなムーブメントがあることは確かだ。

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EdTech(教育×テクノロジー)をテーマにした「EdTech Media」、教育業界に特化した求人サービス「Education Career」を運営する、株式会社ファンオブライフ代表取締役。 EdTechのムーブメントを、情報と人材の面から支援している。